ジェットエンジンのメリット
高速化に加え、ジェットエンジンの大きなメリットのひとつは、より高い高度を飛行可能になることである。バンデローリは従来の徘徊型兵器よりも高い高度を飛行することで、この種の兵器に対してよく使われる短距離防空システムを回避しやすくなる。
さらに重要なのは、飛行高度を上げればウクライナの電子戦(EW)システムに対する脆弱性が低下することである。現在、ロシアの徘徊型兵器のかなりの割合がEWシステムによって無力化されている。EW信号は距離とともに減衰するため、高高度を飛ぶドローンは妨害信号と自機の指令信号や航法信号とを識別しやすくなる。
ロシアには、同等の航続距離・射程や電波妨害(ジャミング)への耐性を持つ兵器はほかにもあり、極超音速ミサイルの「キンジャール」もそのひとつである。しかしながら、こうした兵器は非常に高価であり、さらに西側諸国による制裁で生産面でも課題を抱えている。
その点、バンデローリは多くの問題を回避できると思われる。イランが開発したドローンがベースなのなら、イランから部品を調達しやすいかもしれない。また、電子機器はゲラニ-2などロシア製のほかの徘徊型兵器と共通である可能性が高い。ジェットエンジンに関しては、ロシアにしっかりした基盤がある航空産業を当てにできる。
価格はピストンエンジン搭載の徘徊型兵器よりは高いだろうが、1発1000万ドル(約14億2000万円)ほどと推定されているキンジャールよりははるかに安いだろう。
比較的低コストという点はきわめて重要である。ロシアが現在、ミサイルやドローンを使って行っている戦略爆撃では、大量の飛翔体でウクライナの防空網を圧倒することが必要になっている。新型の徘徊型兵器、とくに従来型よりも高速で、異なる高度を飛行する徘徊型兵器を攻撃群に組み込めば、ウクライナ側による探知・迎撃といった対応はさらに難しくなるだろう。
ロシアはバンデローリで成功を収めているようだが、驚くには当たらない。バンデローリには、ウクライナの多数の防空システムを回避し、ウクライナの深部を攻撃する能力がある。バンデロールの使用は今後増えることが予想される。
とはいえ、この戦争で投入されたほかの新技術と同様に、この優位性も一時的なものになるだろう。ウクライナが防空システムや戦法を適応させていくにつれて、バンデローリの有効性は次第に低下していくと考えられる。それでも、この新兵器は、戦争の非常に重要な局面においてロシアに貴重な能力を与えている。


