別の可能性
それでも、DMSを生成できる非生物的反応は、よく見られるもので効率的だと、郭は一貫して主張する。従って、DMSの検出については、別の説明が可能な場合は、生物起源であると結論づけることはできないと、郭は続ける。これほど並外れた主張ができるのは、別の可能性が排除される場合に限られると、郭は述べている。
だが、マドゥスダンは意見を異にしている。
DMSは、彗星内よりも惑星大気中の方がはるかに不安定なため、継続的に補充されない限り、存続期間が非常に短くなると、マドゥスダンは説明する。ハビタブルゾーン内の惑星に存在するDMSを説明するのに、非生物的反応が存続可能なメカニズムになり得ることは、現在のところまだ証明されていないと、マドゥスダンは続けている。
K2-18bのような水素に富む海洋惑星に微生物が生息する可能性については、どうだろうか。
生命に至る生化学的な経路は多数あるため、地球の生命と類似した形態を押し付けすぎてはならないと、郭は指摘する。現在知られている形態の生命の検出に関しては悲観的に見ているが、別の形態の地球外生命は広く存在すると楽観的に考えていると、郭は述べている。
現在行っていないことで今後行うべきことは何だろうか。
バイオシグネチャーを探求する前に、衛星に搭載された高いスペクトル分解能を持つ赤外分光器の登場に期待したいと、郭は述べている。これにより、宇宙に存在する複雑な有機化合物の構造を同定し、有機物の非生物合成に関する理解を向上させることが可能になるだろうと、郭は指摘した。
太陽系外のバイオシグネチャーを見つけることは、不可能な課題なのだろうか。
惑星科学者はこれまでに、隕石に含まれる約100種のアミノ酸を含む多種多様な有機化合物を発見しているが、これらはすべて非生物的に生成されるものだと、郭は述べている。従って、疑いの余地なく生物起源と特定できるバイオシグネチャーが系外惑星に存在するのを見つけるのは非常に困難だと、郭は説明する。地球外生命を見つける絶好の機会は、現地観測やサンプルリターン(地球への試料持ち帰り)による惑星探査を通じて得られると、郭は述べている。
だがそれでも、たとえ今回の結果が誤検出と判明するにせよ、何光年も先にある、地球とは全く異なる惑星に存在する複雑な分子の検出が今や可能になっていると知ると、希望が胸に溢れてくる。


