デバイスはさまざまな形状を試した。波形探索時はむき出しの基板と電極を手づくりの箸につけた。その流れで箸型デバイスを試作したが、うまくいかなかった。
「基板をバンドにして腕につけて箸にコードをつないだのですが、箸の使い方によってはコードがひっかかってしまう。ならばと基板を内部に埋め込んだのですが、そうしたら箸が体温計くらいの太さになった。そのため、第1弾からは外しました」
プロトタイプとして発表したのはお椀型とスプーン型だ。しかしお椀型はメンテナンス面で課題が残ったために一時断念。スプーン型も重量や形状で工夫の余地が大きかったが、何度か改良を重ね、ようやく日常的に使いやすいデザインを実現。第1弾はスプーン型に絞った。
音楽のように味覚情報が流通する未来
24年5月の発売後、注文が殺到したことは前述の通りだ。もちろんここがゴールではない。本格的な普及へ次の手を打っている。
「今年の夏には、第2弾でスプーン型以外のデバイスをリリースするつもりです。生産体制も強化して、販路も拡大したい。味覚の変化は実際に体験してもらわないと伝わりづらいので、イベントや飲食店とのコラボ企画ももっと仕掛けていきます」
海外展開も模索中だ。CES出展は海外市場のリサーチも兼ねていた。北米は減塩より脂質や糖質に課題があると聞いていたが、展示を見に来たアメリカ人から「俺たちはソルトラバーだ。フォーク型もつくってくれ」と言われ、ニーズがあることを確信したという。
当面は減塩生活をする人に楽しい食体験を提供することを目指すが、SF好きの佐藤は「私の妄想」と断ったうえで、その先の世界を教えてくれた。
「塩味以外もターゲット。さまざまな味を電気味覚で実現できれば、旅先で食べた料理の味を食卓で再現することも可能になる。味を情報化してやりとりすることで、食事の楽しみ方を広げていきたいです」
佐藤 愛◎東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。2010年キリンホールディングスに入社。清涼飲料や新規食品素材など、食領域における研究開発に携わる。19年からエレキソルトの開発に着手。24年5月に発売開始。



