北米

2025.05.11 11:00

イーロン・マスクの重力圏から逃れられない弟キンバル、静かなるもう一人の億万長者の人生

キンバル・マスク(Photo by Michael Loccisano/Getty Images)

兄弟は、1999年にZip2を3億700万ドル(約440億円)の現金取引で売却し、キンバルは税引き前で1500万ドル(約210億円)を得たとされる。その後しばらく、キンバルは独自の道を歩み始めたように見えた。イーロンが新たに決済スタートアップのX.com(後にPayPalと合併)を立ち上げる一方で、キンバルはニューヨークに移り、フランス料理の学校「フレンチ・カリナリー・インスティテュート(FCI)」に通い始めた。同校の18カ月間のプログラムで彼は、料理の基本を徹底的に叩き込まれたという。

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スペースXへの参加

しかし、料理の道を志したはずのキンバルは、卒業後に再びイーロンの重力圏に引き戻されて、創業間もないスペースXに加わった。スペースXの初期社員の一人であるジム・カントレルは、キンバルが同社最初のプロジェクト「マーズ・オアシス」に関わっていたことを振り返る。このプロジェクトは、火星にロケットを送り、ガラスで覆われた温室を設置するという突飛な、そして最終的には失敗に終わった計画だった。

「キンバルはよく会議に顔を出していた。イーロンは彼を相談役のように扱っていたよ。あまり多くは話さなかったけど、静かに見守っていた感じだったね」とカントレルは語った。

2005年から2008年にかけてキンバルは、スペースXのプロジェクトの進捗を記録するブログを運営し、時おりチームに料理を振る舞うこともあったと報じられている。「彼は、会社の日常の業務に関わっていたわけではなかった」と当時の社員は言う。それにも関わらず、2009年から2022年にかけての米証券取引委員会(SEC)への提出書類に、キンバルはスペースXの役員として記載されていた。

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なぜキンバルがSEC書類にそのように記載されていたのかについて、ハーバード大学の法学教授のジェス・フリードは、「イーロンがキンバルに追加の収入を与えようとした可能性もある」と指摘した。

キンバルはその頃、レストランのThe Kitchenを立ち上げて兄の会社を手伝う一方で、Me.diumというスタートアップに投資家兼CEOとして参加した。この会社は、他の利用者がどのウェブサイトを見ているかを確認できるSNSブラウザとして始動したベンチャーで、後にOneRiotに改名されたが、失敗に終わった。

同社はキンバルが退任した後の2011年に、ウォルマートに非公開の金額で買収された。「あの会社は投げ売りだった。投資家は誰一人として利益を得られなかった」と事情に詳しい人物は語る。キンバル自身も同社に関わったことが間違いだったと認めている。「毎日みじめな気分だったよ」と彼はインタビューで話していた。

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編集=上田裕資

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