アジア

2025.05.08 08:45

韓国大統領選 保革ともに正義を捨てた権力闘争の展開に

金文洙・前雇用労働部長官(Photo by Woohae Cho/Getty Images)

何より、韓悳洙氏は大統領罷免とトランプ関税政策という未曽有の混乱期に、自ら大統領代行職を放り出した人間だ。いくら、非常戒厳に反対したとはいえ、尹政権の重要閣僚だった事実に変わりはなく、彼にも立候補する正義がない。現在の韓国政府は事実上まひ状態になると言っても過言ではない。韓国政府の元高官は「韓悳洙氏は上流階級の人物で庶民の生活とは縁遠い。これから、進歩陣営は彼のスキャンダルをどんどん流すだろう。このまま支持が広がるとはとても思えない」と話す。

advertisement

一方、韓国最高裁は1日、李在明氏の公職選挙法違反事件での無罪判決を破棄し、高裁に審理を差し戻した。差し戻した以上、高裁で有罪判決が出て、最高裁で確定するという流れになるだろう。ただ、進歩陣営は李氏を候補から降ろす考えはない。元高官は「進歩には代わりの候補がいないし、5日の世論調査結果でもそれほど大幅な支持率の下落は見られなかった。李氏の陣営が裁判の遅延戦術を使えば、6月3日の大統領選までに最高裁判決が出る可能性はない」と言い切る。韓国メディアは7日、李在明氏を巡る高裁差し戻し審の初公判が大統領選後の6月18日に延期されたと伝えた。

もちろん、李氏が大統領選に勝利した後、最高裁が李氏に対する有罪判決を出すことは十分予想される。ただ、進歩勢力は国会で3分の2近い議席数を誇る。いくら「正義がない李在明大統領」だったとしても、保守系勢力に李氏を弾劾訴追するだけの力はない。むしろ、進歩勢力は思うがままに立法権や弾劾を行使するため、司法も「李在明大統領と進歩勢力」にひれ伏すことになるだろう。

正義や政治倫理そっちのけで、「陣営の論理」がまかり通るのが、今回の韓国大統領選の最大の特徴と言えるだろう。

advertisement

過去記事はこちら>>

文=牧野愛博

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事