そして、たとえマスクがオースティンに本社を置くテスラの仕事に費やす時間を増やしたとしても、彼は依然としてスペースXやX(旧ツイッター)、ボーリング・カンパニー(トンネル掘削企業)、ニューラリンクの業務を統括しており、それと並行して「14人以上の子どもたち」の父親の仕事もこなしている。彼の手は、DOGEに関与する以前からすでに一杯だったのだ。
「ゾンビ化」するテスラ
テスラが直面する最大の課題は、第1四半期に13%も落ち込んだEV販売の減少を食い止めることだ。そしてさらに深刻なのは、同社の自動車部門の収益が20%も落ち込んだこと。これはテスラ車の販売台数が減っただけでなく、価格も下がったことを意味している。また、今期の純利益の4億900万ドル(約590億円)のすべてはカーボンクレジットによるもので、これは言わば米国やカリフォルニア州、EUの環境規制を満たすための他の自動車メーカーの支払いから得た「ただでもらった金」なのだ。テスラは四半期中に5億9500万ドル(約850億円)分のクレジットを売却したが、これがなければ赤字になっていた。
同社が売上の不振を立て直すための最も単純かつ明白な手段は、新モデルの投入だ。しかし、マスクとそのエンジニアたちはそれを選ばず、2020年と2017年に発売されたモデルYとモデル3の「リフレッシュ版」をより安価に提供するための準備を進めている。これは、従来の自動車メーカーが行う「フルモデルチェンジ」ではなく、新しいライトバーやよりシャープなヘッドライト、空力に優れたホイールなどの小規模な刷新にとどまるという。
テスラはこの戦略で販売に一時的な刺激を与えるかもしれないが、長期的な勝ち筋とは言えない。多くの自動車メーカーが定期的に新型車を出すには、理由があるのだ。調査会社GMオートモーティブを率いるグレン・マーサーによれば、大幅なデザイン変更の方が通常は良好な成果を生むという。「古い車種を長期間、外装の変更なしで市場に残し続ければ、それはゾンビのような存在になりかねない」と、マーサーはフォーブスに語った。
そんな中、急成長する中国のEVメーカーの中でも特にBYD、そして米国のGM、リビアン、韓国の現代自動車や起亜自動車、さらには日本のホンダなどのライバルたちは、新型モデルを出し続けている。テスラの市場シェアが、3年前の75%から直近の43%にまで落ち込んでいるのも無理はない。
マスクは数年前まで、「2030年代終盤までに年間2000万台のEVを販売する」と豪語していた。だが現在、彼はその目標をひっそりと取り下げ、代わりにロボタクシーやAIサービス、作業ロボットの販売を柱とする新たなビジネスモデルに舵を切っている。
「この会社の未来は、大規模な自律走行車と大量のヒューマノイドにある」と、マスクは4月の決算発表で語った。
それが本当だとしても、テスラがそれを実現できるという証拠は提示されていない。ロボタクシー分野における事実上のリーダーは、Googleの親会社である米アルファベット傘下のウェイモだ。同社は、テスラが計画するものよりもはるかに高度なセンサーと演算能力を備えた車両を使っている。
一方、ヒューマノイドではボストン・ダイナミクスが何年も前から、テスラの不安定な「オプティマス」よりはるかに高性能なロボットを披露してきた。また、短期的な問題としては、マスクが決算説明会で明かしたように、トランプの関税に対する中国の報復によって、ロボット用モーターに必要なレアアース磁石が手に入らなくなることが挙げられる。


