北米

2025.05.07 12:30

マスクの宇宙への野望を支える街「スターベース市」が自治体として承認、米テキサス

Marie D. De Jesús/Houston Chronicle via Getty Images

Marie D. De Jesús/Houston Chronicle via Getty Images

米南部テキサス州のメキシコ国境に近いキャメロン郡の住民らは5月3日、イーロン・マスクの長年の夢だった「Starbase(スターベース)」と呼ばれる新たな自治体を設置する計画を、賛成多数で承認した。

スペースXやテスラを率いるマスクは、4年以上前から、以前に「ボカ・チカ・ビレッジ」として知られたスペースXの本社やロケットの打ち上げ施設周辺の約1.6平方キロメートルのエリアを「スターベース」と呼ばれる新たな「市」にするために動いてきた。そして、3日に行われた投票でこの自治体を設立する案が、賛成212票・反対6票という圧倒的多数で可決された。

この結果は驚くには値しない。というのも、現地の住人約500人の大半がスペースXの従業員とその家族だからだ。地元のキャメロン郡の当局者も、スペースXとスターベースがこの地域の経済発展の原動力になっていると繰り返し称賛していた。

キャメロン郡の行政部門トップであるエディ・トレビーニョ・ジュニアは、2024年の声明で「スペースXは、観光収入の増加や新たな雇用機会の創出を通じて、郡内のすべての都市にプラスの影響を与えている」と述べていた。

スターベースの有権者たちは、スターベース市の新市長と2人のコミッショナーにスペースXの社員3人を選出した。市長に選ばれた同社の副社長ボビー・ピーデンと2人の幹部は、いずれも無投票で当選した。

マスクは、スターベースを太陽系に人類を拡散させるという野望の中心地にしたいと長年訴えてきた(Getty Images)
マスクは、スターベースを太陽系に人類を拡散させるという野望の中心地にしたいと長年訴えてきた(Getty Images)

スターベースを、事実上の「カンパニータウン」とすることで、土地利用の規制やインフラ整備、公共サービスの運営などは新たな市の管轄下に置かれることになる。さらに、これまでキャメロン郡の承認を必要としていたロケット打ち上げのためのビーチ閉鎖なども、スターベース市が独自に決定できるようになる可能性がある。

こうした権限の行使には州議会の承認が必要だが、スペースXの経済効果を認めているトレビーニョ・ジュニアのような郡の当局者でさえ、スターベース市が独自にビーチを閉鎖できるようにすることには反対している。さらに一部の地元住民や環境保護団体は、スペースXのロケット関連施設や、同社が掲げる「火星への玄関口」という構想に対して環境面の懸念を訴えている。

サウス・テキサスの環境保護団体のインスタグラム投稿によると、スターベース市の立ち上げに反対する約60人の住民グループが、ボカ・チカ・ビーチで抗議活動を行った。

マスクの野望の中心地

マスクは、スターベースを太陽系に人類を拡散させるという野望の中心地にしたいと長年訴えており、その第一歩として、スターシップを用いて火星に人類を送り込もうとしている。巨大宇宙船のスターシップはこれまで、スターベースでのみ製造や組立・打ち上げが行われてきたが、将来的にはフロリダ州ケープカナベラルからの打ち上げも可能になるかもしれない。

スターシップは、火星に向かう前に、今後の数年でNASAのアルテミス計画の一環として宇宙飛行士を月へと運ぶ予定だ。

スターベースは、スターシップの製造施設の「スターファクトリー」や発射インフラに加えて、従業員や観光客のための道路や住宅、基本的な生活インフラの整備を進めている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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