TikTokで暴露されるファッション業界の闇、ブランドの透明性求める声が高まる中

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ブランドイメージがすべてを左右する時代に、予想外の声が消費者の注目を集めている。それは、製造業者自身の声だ。

中国系短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」では、世界的なブランド向けに製品を製造する工場の舞台裏を公開する中国の供給業者が後を絶たない。これらの投稿は、目もくらむような小売価格が付けられる前に、いかに安い価格で製品がブランド企業に買い取られているかを暴露している。

ある話題の動画では、製造業者が300ドル(約4万4000円)以上で販売されるハンドバッグの製造工程を暴露し、実際の製造にかかった費用は15ドル(約2200円)以下だったと明かしている。そのほか、欧米の大手靴ブランドの製品について、製造コストは販売価格の1割にも満たないとする動画も上がっている。これらの動画の多くは後に削除されたが、再生回数は数百万回に及んでいた。

だが、これは単にソーシャルメディア(SNS)上で衝撃を与えようとする意図にとどまらない。これらの動画は、透明性に関する問題を提起している。透明性とは、ファッション業界が何を作るかだけでなく、どのように、そしてどのような目的で作るのかに対しても責任を負うということだ。

小売価格の背後に隠された真実

もちろん、小売の段階で利益を上乗せすることは、今に始まったことではない。老舗の高級ブランドから中堅のストリートブランドに至るまで、最終的な小売価格が物理的な製造コストをはるかに上回る金額になるよう、利益が上乗せされている。消費者はデザインやマーケティング、物流、ブランドの威信、そしてこれまで以上に価値の約束にもお金を払っている。その価値の中には、持続可能性や倫理性、責任といったものが含まれる。

グッチ、ボッテガ・ヴェネタ、バレンシアガなどを傘下に持つ仏高級ブランドグループ、ケリングは、サプライチェーン(供給網)の透明性の向上に取り組んでいる。仏高級ブランドグループ、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンも、原材料の生物多様性や再生農業への取り組みなど、同様の投資を行っている。

こうした取り組みは心強いが、費用もかかる。当然のことながら、リサイクルカシミアや追跡可能なオーガニックコットンの調達は、一般的な代替品より高価になる。より良い実践のために投資しているブランドは、より高い価格を請求することが許されるべきではないだろうか?

しかし、ここで疑問が生じる。持続可能性が、実質的な価値を提供することなく利益に上乗せされたらどうなるのだろうか? ブランドが「持続可能なファッション」を掲げてプレミアム価格をつけ始めた時、その追加コストが実際の社会的な取り組みを反映したものなのか、それとも単に意識の高い消費者心理につけ込んでいるだけなのか、私たちはどうやって見極めれば良いのだろうか?

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翻訳・編集=安藤清香

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