大幅変更される月探査シーケンス
日米両政府は2024年3月、日本人宇宙飛行士2名を月面に着陸させることで合意した。どのミッションに搭乗するかは未定だが、 日本が関わるモジュールがゲートウェイに接続されるアルテミス4や、トヨタの与圧式ローバー「ルナクルーザー」が送り込まれるアルテミス7(2032年打ち上げ予定)が有力視されてきた。ただし、月周回軌道ステーション「ゲートウェイ」が中止され、月への移送手段も変更された場合、その「覚書」が白紙に戻ることが危惧される。一方で、オリオンよりも定員数の多いスターシップが月往復に使用されれば、日本人枠が拡大することも考えられる。
ゲートウェイは複数のモジュールで構成されるが、居住・物流モジュール「HALO」(ノースロップ・グラマン)と、推進モジュール「PPE」(マクサー)の打ち上げが2027年に予定されている。HALOの主要構造物はすでに完成し、4月初頭からは最終試験に入っている。他の構成要素としては、居住モジュール「Iハブ」(欧州、JAXA)、燃料補給モジュール「エスプリット」(欧州)、エアロック(ドバイ)、ロボットアーム(カナダ)などがあるが、計画中止が正式に決まれば、各事業者は機材を他のミッションに流用するなどの対応が迫られる。
ゲートウェイは、クルーが宇宙船から月着陸機にトランジットするための中継地点であり、研究拠点でもある。ゲートウェイがなくても宇宙船と月着陸機が直接ドッキングすることによって月面探査はできるが、月近傍に滞在できる期間が短縮され、月面探査の機会が低減される可能性がある。一方、過去にスペースXは、スターシップを宇宙ステーションとして活用する構想を明らかにしている。これが実現すれば、人員輸送機、月ステーション、月着陸機(スターシップHLS)のすべてがスターシップで構成されることになる。
ゲートウェイへの物資輸送機として、スペースXが「ドラゴンXL」、JAXAが「HTV-XG」の開発を進めているが、今後、民間による低軌道ステーションと月探査が活性化すれば、ゲートウェイが中止された場合もその損失は限定的だと思われる。また、日本のispaceの月着陸機など、近年数多く打ち上げられている民間月着陸機に関しては、2029年1月まで続くトランプ政権下では、新規の開発補助金を得ることは難しくなる可能性は高い。ただし、アルテミス計画自体が継続される状況においては、既存機によるタスクオーダー(サービス調達)契約のもと、月面輸送サービスにおいても一定の需要は続く、または需要が高まるとも考えられる。


