ドナルド・トランプ米大統領は、ロシアとウクライナの戦争の背景にある歴史と原因をよく理解していないと、複数の専門家が指摘している。同大統領のこうした誤解と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して抱いている親近感により、米国がロシア側に有利な和平案を提示することで、ウクライナはさらなる侵略を受けることにもなりかねないと警告する専門家もいる。
ロシアがウクライナに侵攻した理由に関するトランプ大統領の見解
トランプ大統領は2025年4月22日、米誌タイムのインタビューで「ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)への加盟という希望を捨てるべきか?」と問われ、「ウクライナがNATOに加盟できるとは思えない」と一蹴した。同大統領はさらに、「ウクライナがNATOへの加盟を口にし始めた時から戦争が始まったと考えている。もしその話が出ていなければ、戦争が始まることはなかった可能性の方がずっと高かっただろう」と持論を展開した。
これに対し、米ハーバード大学で歴史学の教壇に立つウクライナ系のセルヒー・プロヒー教授は、トランプ大統領の見解が間違っていると反論した。「ウクライナ東部とクリミア半島を併合するというロシアの脅しは、同国のボリス・エリツィン元大統領時代にまでさかのぼる。プーチン大統領は2003年、前任のエリツィン元大統領の考えに基づき、クリミア半島沖にあるウクライナのトゥズラ島を占領しようとした」
「ロシアが2014年にクリミア半島を併合した理由は、同半島に海軍基地を設置する計画があるとされたNATOの脅威によるものだと説明された。ところが実際には、この計画はウクライナのマイダン革命(訳注:2014年2月に同国で起きた政変)に対する応答であり、欧州連合(EU)との連合協定に署名するという決意だった。ロシアはウクライナとの戦争を開始することで、2008年にウクライナの加盟を拒否したNATOを阻止したのではなく、かつての帝国の臣民だったウクライナがロシアの影響圏から『脱出』することを阻止したのだ」
プロヒー教授は著書『ロシア・ウクライナ戦争:歴史の復活(仮邦題)』の中で、2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始するまでの歴史を説いている。同教授は、現在に至るまでの長年にわたるロシアの対ウクライナ政策の目的は、ウクライナを支配し、武装解除し、プーチン大統領の好みに合った指導者を選出することだと記している。



