『ロシア政治入門(仮邦題)』を著した米シラキュース大学のブライアン・テーラー教授も、「ウクライナのNATO加盟への希望が戦争勃発の原因となった」というトランプ大統領の主張は検証に耐えるものではないと指摘する。「ウクライナにとって、2008~22年までNATO加盟への本格的な見通しが立たなかったことを考えると、将来のある時点で同機構に加盟したいという同国の希望が2022年2月のロシアによる全面侵攻を引き起こしたとは考えにくい。この14年間、ウクライナが近い将来NATOに加盟できる見通しを強めるような出来事は何ひとつなかった」
「プーチン大統領が全面侵攻に踏み切った主な動機は、ウクライナに対するロシアの政治的支配を回復したいという願望であり、特定の領土の問題ではなかったという点で、ロシアとウクライナの専門家のほとんどは意見が一致しているのではないだろうか。これは、ウクライナは独立した国家ではなく、人為的な国家であるというプーチン大統領がことあるごとに表明している信念を反映している。プーチン大統領の動機はウクライナに対する帝国主義的な考えであり、NATOによるロシアへの安全保障上の脅威に対する懸念ではない」
「ロシアが自国の領土への攻撃を抑止するために文字通り数千の核兵器を保有していることは注目に値する。また、プーチン大統領は、陸上の長い国境線で接する隣国フィンランドが2023年にNATOに加盟することに対しては、何の懸念も抱いていなかったことにも目を向ける必要がある。実際、ロシアはウクライナ侵攻に人員を投入するために、フィンランド国境から軍隊を移動させているのだ」
ウクライナ情勢を巡り、物議を醸すトランプ大統領の発言
ロシアとウクライナの戦争を巡り、トランプ大統領はそのほかにも物議を醸す発言をしている。米紙ヒルが報じたところによると、トランプ大統領は4月24日、米ホワイトハウスで記者団から「和平に向け、これまでロシアがどのような譲歩をしてきたか」と問われ、「戦争をやめることと、ウクライナ全土の占領を諦めることだ。これはかなり大きな譲歩だ」と応じた。
これに対し、オーストラリア陸軍の退役少将で『ウクライナ戦争:戦火の中の戦略と適応(仮邦題)』の著者であるミック・ライアンは、「『ウクライナ全土を併合しない』ことがロシア側の譲歩だと主張するのはばかげている」と非難。「プーチン大統領がウクライナ全土を併合しないのは、できないからだ」と指摘した。


