関税、債務、経済政策
関税が引き起こすインフレにより、企業側の採用コストが上昇し、雇用がさらに冷え込む可能性がある。そう警鐘を鳴らすのは、資産運用大手Black Rock(ブラックロック)のラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)や、大手銀行JP Morgan(JPモルガン)のジェームズ・ダイモン会長といったビジネスリーダーたちだ。ヘッジファンド「Pershing Square(パーシング・スクエア)」を率いる投資家ビル・アックマンは、先行きが不透明なことで事業拡大が凍結され、雇用創出が抑え込まれると主張している。
著名投資家でもあるスコット・ベンセント米財務長官は、関税によって米国内の製造業が活性化すれば、時間とともに、物流や貿易コンプライアンスに携わるホワイトカラーの仕事が間接的に押し上げられる可能性があるとしている。しかし、マクロ系ヘッジファンド(マクロ経済の世界的な見通しに基づいて資産を運用するヘッジファンド)「Bridgewater(ブリッジウォーター)」を創設した投資家レイ・ダリオは、関税問題について、もっと深刻な構造的問題、債務の拡大、競争力低下の兆候だと見ており、労働者のスキル向上が必要になると警告している。
米トランプ政権が新たに打ち出した関税政策の一環として、ほとんどの国が、基本関税10%の対象になっている。これにより株式市場は下落し、生産を一時停止するメーカーが出て、多くの企業は採用と経営状態を見直すようになった。しかし、こうした逆風のなかでも、ヘルスケア業界と社会サービス分野では、2025年3月に雇用が22万8000人拡大し、特定のセクターでは変わらぬ需要があることが反映されている。
自動化、AI、脅威、機会
自動化とAIにより、ホワイトカラーの職業がかつてない速さで再編されつつある。英シンクタンク公共政策研究所(IPPR)の2025年リポートによると、法律調査から財務モデリング、管理業務に至るホワイトカラー業務の70%が、AIで一変するか、AIに取って代わられる可能性があるという。
ホワイトカラーの仕事は今、肉体労働や屋外作業と比べてディスラプション(破壊的革新)による影響を受けやすくなっている。高等教育を受けた労働者は自動化の影響を受けないという、これまでの前提が覆っているのだ。
IBMや大手コンサルティング会社などは、AIを活用することで事務処理業務に携わる何千人もの労働者を削減している。「ブリッジウォーター」のダリオはこうした流れについて、従来の役割を危うくする構造転換だと警鐘を鳴らしている。
その一方で、AIに隣接する分野では新たなチャンスが浮上中だ。例えば、サイバーセキュリティやデータサイエンス、再生可能エネルギー工学などの分野では需要が増加していることが、世界経済フォーラムが2025年1月に発表した「The Future of Jobs Report 2025(仕事の未来リポート2025年)」で明らかになった。


