1. 理想化されるという問題
理想化されることは、ある程度までは、自分の価値が認められたと感じられる経験だ。とりわけ、パートナーがあなたの親切さや賢さといった、意義深い特性をほめてくれるときにはそう感じる。
こうした正の強化によって、関係初期のふたりは、より引かれ合うことがある。そのため人はしばしば、恋愛関係の最初の段階で相手を魅了しようと努力する。
だが、過度の理想化は長期的に見ると関係をむしばむことがある。2013年に学術誌『Journal of Social and Personal Relationships』に掲載された論文によれば、相手を「完璧」だとみなすことは、理想化された側の「努力の放棄」や、「パフォーマンス不安(あがり症)」につながる可能性がある。
理想化された側は、自分はもう完璧なのだから改善に努める必要はないと思いこむ場合もあるし、あるいは、パートナーが抱いている現実離れした虚像を維持しなければならないというプレッシャーを感じる場合もある。その結果としてストレスを抱え、自分を偽り、相手を「がっかりさせない」ために欠点を隠す結果になりかねない。
このような構造は、時が経つにつれ、長期的な恋愛関係や結婚生活への満足度を下げる。本物の親密さを育むには、完璧でない部分を受け入れる必要があるからだ。
パートナーがあなたを理想化するのは、あなたという人間のすべてを見ようとせず、自分自身の満たされないニーズや幻想を、あなたに投影しているせいかもしれない。だが、あなたを手放しに絶賛する相手は、あなたに対して抱いていた非現実的なイメージに傷が付いたと思った途端、唐突に批判を始めるかもしれない。そうなれば、あなたは混乱し、傷付くことになる。
早い段階での大げさなお世辞は、一足飛びに親密度を高め、危険信号に気付かれにくくするための心理操作術ということもありえる。この場合、あなたはいつでも、「完璧なパートナー」という役柄のオーディションを受けている気分になるだろう。
やがてあなたは、不安を募らせるようになる。誰にでもあるような欠点が露呈したとき、相手はどう反応するのだろうと不安になるのだ。相手からずっと慕ってもらえるように、本当の気持ちやニーズを隠して、真の自分をさらけ出すことをやめてしまうかもしれない。
現在、誰かと交際中の人は、次のような、かすかな兆候に注意しよう。
・あなたの弱さを無視、あるいは軽視する(「あなたはいつも自信満々なんだから、こんなことで不安にならないでしょう?」)
・褒め言葉が過剰、あるいは表面的に感じる(例えば、「あなたは何から何まで完璧」といった言葉だ。一方、「難しい話し合いを、本当にうまく処理したね」といった褒め言葉は、褒めるべきところを特定している)
・相手が持つ理想化されたイメージに合うように、いつの間にか自分の行動を調整している
こうしたことが当てはまるなら、少し距離をとって、明確な境界線を引いた方がいいだろう。いつも褒めちぎられたり、非現実的な期待を持たれるのは居心地が悪いと、相手にやんわり伝えよう。対等な存在として、誰でもそうであるように、失敗もするけれどそこから成長できる人間として見られたいと、あなたの希望を伝えるのだ。


