生成AIの急速な発展に伴い、ディープフェイクが社会に深刻な影響を与えている。
世界経済フォーラムが2025年1月に発表した「グローバルリスク報告書」では、今後2年の間に最も深刻な影響をもたらす可能性があるグローバルリスクとして「誤報と偽情報」を挙げている。24年2月のミュンヘン安全保障会議で採択された「ミュンヘンアコード」や、同年4月に自由民主党デジタル社会推進本部が出した「AIホワイトペーパー」も、誤情報や偽情報、ディープフェイクへの対策強化に取り組むよう提言している。
情報の信頼性の担保が急務となるなか、デジタルコンテンツの真正性を証明する技術の開発や実証実験に力を注ぐ企業がある。印刷技術で知られるTOPPANホールディングスのグループ会社、TOPPANデジタルだ。
同社は24年10月11日から12月27日にかけて、平将明衆議院議員(デジタル大臣)の事務所の公式サイトを使って画像データの真正性を確認する実証実験を行なった。平代議士のホームページに掲載している画像データの一部に電子透かしと来歴情報を埋め込んだのち、それらの画像が二次利用された場合に情報源や改ざんの有無を確認できるかどうかを検証するというものだ。
この実証実験に使われたのが、TOPPANデジタルが手がけるアイデンティティ(アバター)管理基盤「AVATECT®」(アバテクト)の電子透かし付与機能だ。アバテクトは、メタバース時代の到来を見越した同社が22年2月に開発したデジタル基盤で、個人情報とプライバシーを保護しつつ、オンライン上で個人のアバターの唯一性や真正性を証明する機能を提供している。
フェイク対策にはSNS事業者との連携が不可欠
アバテクトが用いる技術要素は主に4つある。ひとつが「eKYC」 (electronic Know Your Customer)と呼ばれる、オンライン上で公的証明書を使って本人確認を完結する技術だ。eKYCを手掛ける事業者と連携し、アバターと本人確認済みの利用者とを紐づけることで、第三者に身元を証明する。
二つめが「SBT」(Soulbound Token/譲渡不可能なNFT)だ。リアルやバーチャルの体験で得た資格や行動履歴、証明書などをSBT化してアバターに紐づけることで、電子的な属性情報(デジタルアイデンティティ)の不正利用やなりすましなどのリスクを軽減しつつ、メタバース空間などのサービスをより快適に利用できる環境の構築を目指す。
三つめが「VC」(Verifiable Credential/デジタル証明)だ。個人や組織、属性や資格情報をデジタル化した「証明書」のことで、暗号化することで改ざんを防止する仕組みを備えている。
そして四つめの技術が、前述の実証実験にも用いられた「電子透かし」だ。画像や動画、アバターなどのデジタルコンテンツに、特定の情報を埋め込む。さらに、C2PA(デジタルコンテンツの信頼性を高めるための技術標準を開発する業界団体)の規格に準拠した形で、同デジタルコンテンツの来歴情報を埋め込む。こうすることで、コンテンツの真正性の確認や著作権の保護が期待でき、誤情報や偽情報、ディープフェイク拡散の抑制にもつながる可能性がある。



