ベンチャーキャピタル大手のコースラベンチャーズが、注目の防衛テックのスタートアップ、Mach Industries（マッハ・インダストリーズ）の1億ドル（約145億円。1ドル＝145円換算）の調達ラウンドを主導するための交渉を進めていることが、フォーブスの取材で明らかになった。
コースラベンチャーズのパートナーのキース・ラボワは、ロサンゼルスに拠点を置く攻撃用ドローンのメーカーのMach Industriesと、「資金調達に関して協議した」と事情に詳しいふたりの関係筋がフォーブスに語った。さらに別の3人も、Machが1億ドル（約145億円）規模の調達を検討中だと語った。この取引により、Machの評価額は最大4億ドル（約580億円）に達する可能性があるという。同社の評価額は、前回の資金調達時には3億3500万ドル（約486億円）とされていた。
ここ最近、シリコンバレーの防衛スタートアップによる巨額の資金調達が相次いでいる。2月には、自動航行する軍用艦を開発するSaronic（サロニック）が6億ドル（約870億円）を調達したのに続き、先日は軍用レーダーを開発するChaos Industries（カオス・インダストリーズ）が評価額20億ドル（約2900億円）で2億7500万ドル（約399億円）を調達していた。
そんな中、コースラベンチャーズによるこの投資は、Machを率いる若き創業者のイーサン・ソーントンへの信任票とも呼べそうだ。マサチューセッツ工科大学（MIT）を中退したソーントンは2022年に19歳という若さで同社を設立し、水素を動力とする兵器の開発を当初の目的として掲げていた。
この構想は投資家の関心を集め、セコイアやベドロックが8000万ドル（約116億円）以上を同社に投資した。しかしMachは創業の初期に、水素エネルギーで動く銃が爆発する事故を発生させ、破片を浴びた従業員が病院に搬送されていた。ソーントンはこの事故に関するメディアのインタビューで、「安全対策が不十分だったのは、経験あるエンジニアやオペレーターを雇う資金がなく、適切な試験設備を持っていなかったからだ」と説明していた。
Machは、その事故以降に攻撃用ドローン「Viper（バイパー）」の開発に軸足を移し、空中グライダーや通信機器を搭載したバルーンも手がけている。さらに2025年3月には、国防総省（ペンタゴン）のArmy Applications Lab（陸軍応用研究所）とドローンの開発契約を結んだと発表した。
米国の軍用ドローン企業が中国製部品に依存していることに対する国家安全保障上の懸念が高まるなかで、Machはドローン用ジェットエンジンを生産する新工場の建設計画も発表している。同社ドローンのプロモーションビデオにおいて、基幹部品にあたるジェットエンジンに中国製品を使用したことで厳しい批判にさらされたため、顧客に販売する最終製品では中国製部品への依存リスクやサプライチェーンリスクを回避することを示す戦略的な動きでもある。
防衛テックへの投資ブーム
一方、コースラベンチャーズは、アンドリーセン・ホロウィッツや8VC、Founders Fundらと並んで防衛関連や宇宙関連の企業への投資を活発化させており、宇宙での素材試験を行うVarda（バルダ）や、極超音速航空機のスタートアップのHermeus（ハーミィアス）などにも投資している。
フォーブスの「ミダスリスト」にも選ばれた投資家のラボワにとって、Machへの投資は彼の興味がハードウェア分野に移ったことを意味するのかもしれない。彼はこれまで、OpenDoor（オープンドア）やSquare（スクエア）、OpenStore（オープンストア）といったソフトウェア企業への投資を主導した経験を持ち、ファウンダーズファンド在籍時にはRamp（ランプ）やAffirm（アファーム）の取締役を務めていた。
ラボワは先日、ワシントンで開催された政府とテクノロジーに関する会議「Hill and Valley Conference」に登壇し、シリコンバレーのテクノロジーを政府のオペレーションの効率化に活用すべきだと訴えていた。
