「主人公症候群(main character syndrome)」とは、人生の中で自分が映画や物語の主人公であり、すべてが自分中心に展開しているかのように捉える傾向を指す。自分の物語を主体的に所有し、個性を受け入れる姿勢とも言える。
誰もが、自分のショーのスターになったように感じる瞬間がある。たとえば、大胆な決断を下したとき、有意義な気づきを得たとき、あるいは完璧な瞬間を生き生きと感じられたときなど、ポジティブな「主人公エネルギー」は力を与え、自己肯定感を高めてくれる。
しかし、一方でスポットライトから降りるべきタイミングを認識することも重要だ。ときには、支えてくれる友人、思慮深い聞き手、ほかの人が輝くのを手助けする役回りが求められることがある。こうした役割を行き来する柔軟性は、自分自身の成長にも、人との豊かなつながりを築き維持するうえでも不可欠なのだ。
以下では、「主人公症候群」が知らぬ間に自己成長を妨げる3つの理由と、その兆候を示す。
1. 周囲の人のために行動しなくなる
自分の「物語」を書き上げることに没頭しすぎると、他の人が助けを必要としている場面を見逃すかもしれない。困難を抱える友人や家族の祝い事、日常のささやかな交流などは、自分の「筋書き」の中心ではないように感じるかもしれないが、それでも大切な瞬間だ。真のつながりとは、主役から一歩降りて、他者の物語にしっかり寄り添うところに生まれる。
他者へのサポートは、ときに自分だけのために行動するよりも大きな満足感をもたらす。2021年に『The Journal of Positive Psychology』に掲載された研究によれば、自己の幸せよりも他者の幸せに目を向けるほうが、自分自身の幸福度をより強く高めることが示されている。これは、人間にとって「他者とつながりたい」という「関係性」と呼ばれる基本的な心理的欲求が満たされるためだ。その「つながりを感じる」という点こそが、幸福感を大きく押し上げる。
「今この瞬間、自分の役どころを気にせずに、周囲の人をどのようにサポートできるだろうか」と自問してみるとよい。解決策を用意しようとせず、深く相手の話を聞く姿勢を身につけよう。相手がアドバイスよりも、かたわらにただいてほしいと望むときがあることに気づくことも重要だ。真の共感とは、一時的にでも自分の視点を脇へ置き、相手の視点に深く入り込むことなのだ。
強固なコミュニティとは、誰もが本音で現れ、相互にサポートし合うネットワークを築くことだ。印象印象付けるよりも「そこにいる」ことを優先するとき、長期的に自分も周囲も支え合う本物のつながりが生まれる。



