トランプによるドル毀損のやり方も常軌を逸しているが、こうした行動を支える理屈も同じくらい異常なものだ。なぜ異常なのかと言えば、世界のほとんどの政府や企業、投資家が国際取引でドルを必要としているために、米政府は金融の重力に逆らうことができる立場にあるからだ。
経済学者らが言うこうした「法外な特権」を享受しているために、米政府は、債務が36兆ドル(約5176兆円)を超え、トランプが新たな減税を推し進め、FRBの独立性を弄ぶなかでも、10年債で4.3%という途方もない利払いを行うことが可能なのだ。
ドイツ銀行のエコノミストらは4月、ドルについて「安全資産としての性質が損なわれつつある」と述べ、「信認の危機」を警告している。
ほとんどの国にとっては夢見ることしかできないような特権を、なぜ米国の指導者がみずから失わせるような真似をするのか、理解に苦しむ。トランプのチームは、関税がもたらす逆風はドル安で相殺できるという考えも打ち出している。そもそも、その関税こそがドルの急落を招いているというのに。
トランプが関税に関して完全に方針転換しようとしているのかはまだはっきりしない。そうだと期待するしかない。中国SNSのハッシュタグのひとつにある「トランプがビビった」が真実だったのかを判断するには、もう少し時間がかかるだろう。一方、何が起ころうとも、「万税じいさん」という、中国のネット民から付けられたありがたくないあだ名は消えそうにない。これに関しては、トランプは自分自身を責めるしかない。


