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2025.05.15 09:15

「地方」のための「地方創生」からの脱却──都市と地方が“共創パートナー”になるには?

「制度」と「信頼関係」、どちらが先に必要か──。

そんな問いを胸に、今回の対談では“関係性の再構築”から地域を変えていく取り組みに目を向けた。「市民主体」を超えて、“地域間共創”を描こうとする新たな実践がある。

地域で何かを始めるとき、最も頼りになるのは“つなぐ人”の存在かもしれない。行政と住民、都市と地方、中央とローカル。異なる立場や文化のあいだに立ち、翻訳し、調整し、ときに汗をかく存在。

今回の対談では、「市民主体」を超えた“地域間共創”のリアルを、「つなげる人」の実践から読み解いていく。

(前編はこちら


“市民主体”を超えて、“地域間共創”へ──「地方創生2.0」の次なる論点

「地方創生2.0」を実現する鍵は、市民が“観客席”から“グラウンド”に降り、自らの言葉と行動で地域と向き合うことにある──。

前編では、高橋博之氏(雨風太陽 代表取締役社長)と加生健太朗氏(一般社団法人つなげる30人 代表理事)が、約10年ぶりの再会を通じて、市民主体を支える仕組みと文化の可能性を語り合った。

後編では、新たに「渋谷をつなげる30人」のメンバーであり、3拠点生活を送りながら都市と地方を“かき混ぜる”実践を続ける金子晃輝氏を加え、「地方創生は地方のためのもの」という従来の構図そのものを問い直すことを試みた。

どうしたら、都市と地方は、“共創パートナー”となり得るのか。現場と現場を横断する実践者たちの対話から、「地方創生2.0」の、その先の風景を探っていく。

金子晃耀プロフィール

ロンド 代表取締役
ジェイアール東日本企画 秋田支社 地域プロデューサー
明星大学経営学部経営学科 客員研究員 他5社
大学時代に多摩地域の地域活性化事業を通して起業。ジェイアール東日本企画の地域プロデューサーとして、秋田県にかほ市の廃校活用を担当し、ジェイアール東日本企画として初の地域資源活用を目的としたビジネスプランコンテストを企画運営。
その他、山形県鶴岡市の映像コンテンツを活用したプロモーション事業やインバウンド事業の統括プロデューサーとして従事。
2021年4月、秋田県にかほ市にて地域資源を活かした持続的なまちづくりを目的にロンドを設立し、インキュベーション施設「わくばにかほ」を運営。漁師や漁業の魅力を凝縮した「漁師図鑑」や秋田県にかほ市の滞在型観光を目指した「漁船酒madara」の開発。
岩手県奥州市伊手地域にある旧伊手小学校を中心とした地域コミュニティ形成を行い、廃校の利活用に向けた基本構想を制作。
東北・関東を中心にまちづくり事業を展開中。


都市と地方をつなぐ通訳人材の重要性

加生:後編は、「渋谷をつなげる30人」の第9期に参加いただき、秋田を舞台に起業された金子晃輝さんをお迎えします。金子さん、簡単に自己紹介いただけますか?

金子:神奈川県大和市出身の金子晃輝です。現在、秋田県にかほ市でロンドという会社を立ち上げ、まちづくりを“産業”として確立していくことをビジョンに活動しています。

もともとはジェイアール東日本企画の仕事をきっかけに、秋田での廃校活用プロジェクトに関わり、2020年に移住しました。翌年には地域密着のまちづくり法人を立ち上げ、現在は秋田を中心に、他地域からの依頼も受けながら展開しています。

加生:そんな金子さん、実は高橋さんともご縁があったと伺っているんですが、どんなきっかけだったんでしょう?

金子: 秋田県の「農泊」関連の事業で高橋さんが講演に来られた際、僕もPRの仕事で関わっていたんです。その講演の中で、岩手県奥州市のりんご農家さんの話が出てきたんですが、ちょうど僕たちもその地域とご縁ができ始めていて。「あれ?つながってるな」と思って、その数週間後には一緒に岩手まで行って、実際に菅野さんの家に泊まったりして……。

高橋:覚えてるよ。農家さんは俺と同い年で、岩手県奥州市で頑張っている方だよね。典型的な中山間地域でさ、農業は得意でも地域づくりのような部分は苦手だったりする。そこにたまたま金子くんが現れて、廃校を活用した取り組みにも加わってくれて。タイミングが絶妙だった。

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文= 加生 健太朗/写真= 佐々木つぐみ

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