高橋:でも、それって変えられると思ってる。交通費って「固定されたもの」じゃなくて、制度や社会の設計次第で下げられるんです。たとえば「ふるさと住民登録制度」や「関係人口割り」、あるいは“越境サブスク”のような仕組みで、地域に継続的に関与している人の移動コストを下げることはできる。今の鉄道や航空って、空気を運んでるような空席もあるんだから、そこを“貢献している人”に優先的に回すのはむしろ合理的だよ。
そもそも、僕らの社会って「一箇所に定住するのが当たり前」っていう価値観を前提に作られてるじゃない?
でも、働き方もライフスタイルも変わった今、それって本当に“当たり前”なのか?って問い直すべきなんです。たとえば──140年前、日本でいちばん人口が多かったのは石川県。190万人近くいた。2位が新潟で、東京はたった97万人で全国17位、大阪にいたっては34位だった。
つまり、今の「東京一極集中」なんていう構造は自然にできたんじゃなくて、国が政策とインフラで“人為的につくった”んですよ。だったら、逆の構造だって人間の意思でつくれる。社会は天気じゃない。変えようと思えば変えられる。
加生:僕らとしても「どうすれば移動がもっとしやすくなるか」という制度設計には投資していきたいと考えています。 たとえば、関係人口創出のための“基金”を社団で設けて、全国の「つなげる30人」の交流を支援するため交通費を支援するとか、そういうことを現実的に考えているんです。関係性が動き出すための“最初の一歩”を後押しできるように、僕ら自身も仕組みづくりに取り組んでいきたいんですよね。
最後に)地方創生2.0の実現に向けた提言
地方創生1.0は、外部リソースに依存した結果、事業の終了とともに熱量も人材も地元に残らなかった。地方創生2.0は、決してその焼き直しであってはならない。
本対談では、市民が“観客席”から“グラウンド”に降り、自らの言葉と行動で地域に関わる仕組みの必要性(前編)と、都市と地方を越境的に接続し、“共創”の文化を育む人材や関係性の在り方(後編)について語られた。
最後に、これまでの対話を踏まえ、「地方創生2.0」の基本構想や制度設計やKPIにおいて、少なくとも以下の要素の追加を提案したい。
1)市民が参画しやすい仕組みづくりの支援
自分のまちの未来に関わるための「安心して降りられるグラウンド」を、地域ごとに整備すること。対話の場やプロジェクトへの参加が毎年一定数(たとえば年間50人以上)増加するような仕組みを支援し、住民参加の“入口”を地域に実装する視点が求められる。
2)主体性を育むプログラムの導入支援
再現性が高く、全国に横展開されている「つなげる30人」のようなモデルを参考に、市民が他者との関係性の中で自己を拓く機会を意図的に設計すること。プログラム実施後に具体的な行動や新規プロジェクトがどれだけ地域から生まれたか、あるいは翌年以降も地元主体で継続される“自走率”などを含めた中長期の評価が必要である。


