金子:“つながっている”ということ自体が、地方にとっての大きなきっかけや可能性になりますよね。実は去年、僕の本拠地・秋田県にかほ市の市長が、渋谷で「市長ピッチ」をやったんですよ。これは、市長自らがベンチャー企業やスタートアップに向けて、「うちのまちを実証実験の場として使ってほしい」と直接語りかける場で、あえて渋谷のど真ん中で開催しました。
なぜそれができたかというと、僕自身が渋谷とつながっていて、都市と地方のネットワークに接続されていたから。 もし渋谷とのつながりがなかったら、こうした機会は生まれなかったと思います。
「地方のための地方創生」から「都市地方共創」への転換

加生:今の高橋さんの話、まさに「都市地方共創」って言葉がぴったりくる気がします。「地方創生2.0」のその先って、共創モデルがスタンダードになっていくんじゃないかと思っています。
さて、そこで伺いたいんですが、今回、2000億円超の新たな予算が採択されましたが、「地方創生1.0」の焼き増しにならないために、国・自治体・企業・市民の4つの主体に対して「こう変わっていくといい」という提案を金子さんからもらえますか?
金子:まず「国」に関しては、単年度・3年区切りの補助金制度を見直してほしいです。基礎自治体の財政状況はバラバラなので、一律の補助率ではなく、柔軟に設定できると良いと思います。また、 「自治体」は、自分たちの地域をちゃんと理解することが第一歩だと思います。形式的な有識者会議より、日常の雑談から本音を拾うような仕掛けが必要で、それが“課題の本質”に近づく鍵になる。
「企業」は、地方にビジネスチャンスがあることをもっと認識してもいい。人口減少や担い手不足を悲観するだけでなく、「新しい挑戦ができる場」として捉える発想転換が求められると思っています。
最後に「市民」。何かやりたいと思ってるけど動けていない人はたくさんいます。だからこそ、「つなげる30人」のような“安全安心の場”があると、動き出すきっかけになるんですよね。単発のワークショップで終わらず、その後も“伴走し続ける設計”が大事だと思っています。
加生:高橋さん、いかがでしょうか。
高橋:「つなげる30人」のような取り組みが、「地方創生2.0」の実践解として有効であることは、すでに現場で示されつつあると思っています。特に、敦賀での取り組み(※前編参照)は、その象徴的なケースだと思う。
また、金子くんのように
① 地方に深く関わっている人が、都市の「つなげる30人」に入る
② 都市と実際につながり、学び、共創する
③ その経験や知恵が、再び地方に持ち帰られ、還元される
という“循環”が他にも再現できると良いよね。
だからこそ、「広げよう」とするんじゃなくて、自然と「広がる」ことが大事なんです。たとえば“子ども食堂”がそうだった。あれは誰かが旗を振って「全国展開しよう!」と音頭を取ったわけじゃない。ニーズのあるところに自然と根づき、考え方や価値観が自主的に広がっていった。いい仕組みは、必ず“勝手に広がる”ものなんですよ。
かき混ぜ合う社会へ向けて

加生:最後に少し話したいのが「移動」に関することです。僕たちは全国の「つなげる30人」同士をもっとつなげていきたいと思っていますが、一番大きなハードルの一つが交通費なんですよね。


