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2025.05.15 09:15

「地方」のための「地方創生」からの脱却──都市と地方が“共創パートナー”になるには?

金子:しかも地方出身者が多い。つなげる30人なのに、むしろ“渋谷ど真ん中”の人が少ないのが面白いところです(笑)。

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高橋:なるほど。ルーツは地方、今は渋谷。まさに都市と地方の“ハイブリッド型人材”だね。

加生:このプロジェクトの立ち上がり方も興味深くて、「こんな課題があるから誰か一緒にやりませんか?」じゃなくて、「自分の出身地が実は…」「今の仕事にちょっと違和感が…」みたいな、日常会話の中から自然とチームができていくんですよね。

高橋:それが重要なんだよね。能登でもそうだったけど、本音って、課題解決会議じゃなくて、茶飲み話の中から出てくる。だから“雑談力”がプロジェクトの源泉になることがある。

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つなげる30人は、まず仲良くなる。そのうえで、何が出てくるかはわからないけど、だからこそ面白い。

国の委員になった経緯と想い

加生:高橋さんが年末に国の委員(内閣官房「新しい地方経済・生活環境創生本部」有識者会議メンバー)になられた経緯や思いなど、よかったらぜひ聞かせていただけますか?

高橋:あれは、ほんと「出会い頭の事故」。全部たまたまなんです。僕の人生はそういう“事故”の繰り返しでできていて。

心のコンパスが動いたほうに突っ込んでいった結果、気づけば今、ここにいる。石破さんとの出会いだってそう。ある地方創生のカンファレンスの懇親会で、たまたま隣の席に石破さんがいて。石破さんって、初代の地方創生大臣だったでしょ。その時のイベントでも、僕、結構手厳しく言ったんだよね。「この10年やってきた地方創生はなんだったのか」、「もう地方創生を国や自治体だけで担うには限界がある。これからは民間もやらなきゃいけない時代だ」って話をしたら、うんうんって頷きながらちゃんと聞いてくれて。

石破さんは過疎高齢化の先頭集団にいる鳥取県選出の国会議員で、鳥取出身で、人口減少の危機感をリアルに持ってるから、結果的に、総理になってから「地方創生もう一回ちゃんとやる」と。で、その後、さらに総理に直談判したんだよね。

加生:そういう経緯があったのですね。僕も高橋さんの年末のSNSの投稿を見て、「あ、また“地方創生”が動き出すんだな」って、驚いたんです。

高橋:まあでも、普通に考えれば、世界人口は増え続けてるし、資源の奪い合いも始まってる。各国が内向きな通商政策を取り始めて、自由貿易体制も揺らいでる。昔の日本は、国力を背景にお金で食い物やエネルギーを買ってきたけど、もうそれが通用しない。そう考えたとき、都市の人たちが「地方がかわいそうだから応援しよう」なんて感じゃ、もはやダメなんですよ。

都市の豊かさを支えてるのは誰か? 渋谷の企業で働く人材だって、地方で生まれて育って送り出されてきたわけでしょう。つまり、これは“自分たちの未来のための話”。この消費社会をこの先も続けていくために、地方をどう再構築するかっていう、もっと根本的な命綱の話なんです。

だから「地方創生」は、“地方を助ける話”じゃない。都会の問題と一緒に考える必要がある。

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文= 加生 健太朗/写真= 佐々木つぐみ

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