ヘルスケア

2025.05.01 10:00

マスク着用は犯罪に──米国で進む着用禁止の動き

4月25日、トランプ大統領の政策に抗議し、ニューヨーク市立大学シティカレッジからコロンビア大学まで行進するデモ参加者(Spencer Platt/Getty Images)

マスク着用を禁止する法律は「健康上の理由がある人」を例外の1つとしているが、実際に「例外」を見極めるのは難しい。法律上、警察が市民に宗教や健康状態について尋ねることができるのは、該当する犯罪に関連するときだけだ。見た目での判断が難しいマスク禁止法は、免疫力の低下など健康上の理由で着用している人を不利益な状況に追い込む。外出時に知らない人から着用の理由を聞かれたり、マスクを外すよう命じられたりするのは不快な体験だ。そもそも着用の理由を聞くことは、HIPAA法(個人情報保護に関する法律)で規定されたプライバシーの侵害にあたる。「免疫力が低下した人」とは化学療法を受けているがん患者、ステロイドを服用中の人、臓器移植を受けた人、慢性疾患を抱えている人などであり、私たちが想像する以上に多く存在することを忘れてはならない。

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マスク着用が法律で広く禁止されると、こうした人々が逮捕の不安から外出を控えるようになるなど、社会的に孤立する可能性がある。レストランなどでは、マスク着用者の入店拒否を行うところも出てくるかもしれない。マスク着用の禁止は、社会で最も弱い立場にある人々への不当な偏見と差別を生み出す危険性をはらんでいる。

マスク着用禁止を求める政治家には、デモに参加した学生の特定などではなく、真に犯罪を撲滅したいという思いがあるのかもしれない。しかし法律というものは人々のさまざまな事情を広く鑑み、国民全体の幸福を前提に制定されなければならない。マスク着用を法律で禁止することは、何より致死率の高い感染症の広がりを抑制するというマスクの重要な役割を無視している。科学や公衆衛生まで政争の具となっている現在、米国はすべての国民の幸福のために戦うリーダーを必要としている。

「Mask Together America(マスク・トゥギャザー・アメリカ)」の創設者であり、自由なマスク着用の権利をうったえるジュリー・ラムは言う。「私は今、服用している治療薬の副作用で免疫力が低下しています。そして今、他の病気に感染すれば入院する事態も避けられないと主治医に忠告されています。私はマスクを着用して抗議活動を行っていますが、それはマスク着用の自由を訴えるためだけではありません。政府による公衆衛生予算の大幅削減に反対し、みんなで声を上げようと呼びかけているのです」

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forbes.com 原文

翻訳=猪股るー

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