アップルのリーク情報でおなじみ、ブルームバーグのマーク・ガーマンが、また新たなアップルのスマートグラス関連の話題を取り上げた。しかし、このデバイスの登場はまだかなり先のことになりそうだ。
「この製品は、まだ完成からはほど遠い」と、ガーマンはアップルのスマートグラスについて述べているが、この製品はかつて議論されていた拡張現実(AR)グラスよりも大幅に派手さに欠けるものになりそうだ。
アップルが初めて市場に送り出すスマートグラスは、メタがレイバンとの提携で発売した製品に似たものになる見通しで、ユーザーの視界に情報を表示するディスプレイを搭載せず、音声を用いて操作する仕様になるという。
アップルは、このスマートグラスのプロジェクトを社内で「N50」というコードネームで呼んでいるとガーマンは述べている。この取り組みは、同社の人工知能(AI)プラットフォームのApple Intelligenceを新たな形で利用するもので、グラスのカメラが分析した周囲の世界に関する情報を、チャット形式でユーザーに伝えることが可能になるという。
アップルはすでにiPhone向けの「ビジュアルインテリジェンス」と呼ばれる機能で、このコンセプトを具体化しているが、同社はこの機能をグラス向けにカスタマイズする計画なのかもしれない。ビジュアルインテリジェンスは、レストランや企業の詳細情報の検索、テキストの翻訳、要約、読み上げ、植物・動物の識別など、さまざまな操作に対応している。
しかしここで気になるのは、アップルが初のスマートグラスを市場に投入する頃には、メタがより高度なスマートグラスを発売している可能性が高いことだ。ガーマンは先日、別のニュースレターで、メタが現行のスマートグラスにはない小型ディスプレイを搭載した高級版スマートグラスを年内に発売予定だと伝えていた。
彼は、以前のリーク情報でアップルが開発中のスマートグラスが、プライバシー関連の懸念を避けるために撮影機能を持たないものになる可能性を示唆していた。しかし、メタはこれまで200万台以上を販売したとされる競合製品のRay-Ban Metaグラスが、写真やビデオの撮影を主要な用途のひとつとしてアピールしている。そうした中で、アップルが市場に投入する製品がライバルよりも見劣りするものだったとしたら、好ましい結果にはつながらないはずだ。
Apple Intelligenceの遅延
一方、この状況をさらに悪化させるかもしれないのが、アップルがApple Intelligenceの本格展開で競合他社に大きく後れを取っていることだ。アップルのAIシステムの一部は、昨年10月にローンチされた。しかし重要な要素のリリースが遅延したため、同社は虚偽広告で訴訟を起こされる事態に陥っている。
ニュースサイトAxiosが報じたこの訴訟は先月、カリフォルニア州サンノゼの裁判所に提起されたもので、原告はアップルが「iPhone 16シリーズにおいて、その発売と同時にApple Intelligenceの革新的な機能を利用可能だ」と誤解させる虚偽の広告を展開したと主張している。
アップルはまた、当初は年内に予定していたAI機能を強化した「Siri」の次期バージョンのリリースが、2026年にずれ込むという見通しを発表した。
ガーマンはこのような状況を踏まえて、アップルのスマートグラスの発売までには「まだ数年を要する可能性がある」と述べている。



