カナダ人の10人のうち6人が、今年は米国に旅行する可能性は低いと答え、すでに3分の1以上が同国への旅行計画を中止したとの調査結果が明らかになった。ドナルド・トランプ米大統領は、カナダを米国の「51番目の州」にすると発言するなど、両国の政治的緊張が強まっている。
カナダと米国に拠点を置く旅行業界に特化した市場調査会社ロングウッズインターナショナルは29日、カナダ人を対象に行った世論調査結果を公表した。それによると、カナダの成人の60%がトランプ大統領の最近の一連の政治的発言や関税政策が原因で、向こう1年間に渡米する可能性は低くなったと答えた。本調査は、カナダに在住する成人1000人を対象として、4月11~15日にかけて実施された。
回答者の36%は来年までに米国への旅行を計画していたが、計画を中止したと答えた。40%はカナダの国内旅行を選択し、27%はメキシコや欧州など、米国以外の海外旅行先を検討していると回答した。
他方で、米国は「カナダからの訪問者を歓迎している」と考えるカナダ人は42%に上り、米国は「海外からの訪問者を重視している」と答えた割合も38%だった。回答者の8割以上が、米国には「見るべきものややるべきことがたくさんある」と答え、57%が、米国は「ぜひ訪れてみたい場所」だと回答した。
2024年に米国を訪れたカナダ人観光客は2040万人に上り、世界最大の割合を占めた。カナダ人旅行者が米国のホテルやレストラン、店舗などで費やした金額は205億ドル(約3兆円)に上った。米旅行産業協会(USTA)によれば、同年にカナダからの旅行者によって創出された米国内の雇用は14万件に及ぶ。
英コンサルティング企業、オックスフォード・エコノミクス傘下のツーリズム・エコノミクスは今年、カナダから米国を訪れる旅行者数が20.2%減少すると予測している。カナダ統計局によると、陸路で渡米するカナダ人(米国を訪れるカナダ人の大半を占める)の数は3月に前年同月比で32%減少し、飛行機で渡米したカナダ人は同13.5%減少した。
米国への旅行を控えているのは、カナダ人だけではない。外国から米国を訪れる旅行者数は全体的に減少傾向にあり、米国は数十億ドル規模の損失を被っている。米商務省や米税関国境警備局のデータによると、3月に米国を訪れた外国人旅行者数は前年同月比で約14%減少した。



