政治不安と経済的な圧力が観光のトレンドを一変させている。旅行者はコスト上昇と政治的緊張を理由に米国への旅行を考え直しており、米国の人々はインフレと雇用不安のために旅行を控えている。米サウスウエスト航空の最高経営責任者(CEO)が業界は不況に陥っていると明言したように、プライベートジェットを利用するような人を除いて誰もが旅行への支出を減らしている。
政変で米国を訪れる外国人観光客が減少
このところの政変は米国の観光分野に影響を及ぼしている。調査会社ツーリズム・エコノミクスの最近のレポートでは、2025年に米国を訪れる外国人旅行者数は前年から9%減少し、90億ドル(約1兆2850億円)の損失になると予測している。
米当局による外国人の拘留や強制送還は、米国は旅行者を歓迎しない国という印象を与えると米ブルームバーグ通信は指摘している。一例として、カナダ企業は現在、米国に出張する幹部に普段使っている携帯電話ではなくプリペイド式のものを持っていくようアドバイスしている。また、フランスやカナダ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、アイルランド、オランダ、英国といった国々は米国への渡航に関して注意を喚起している。
米国を訪れる外国人のほぼ半数がカナダと欧州からだが、その多くが今、渡米を躊躇している。
・フランスのホテルチェーン、Accor SA(アコー)のCEOセバスチャン・バザンによると、今夏欧州から米国を訪れる客の予約は25%減少している
・仏紙ル・モンドは、フランスの旅行代理店では米国への旅行の需要が20%ほど落ち込んでいると報じている
・米紙ワシントン・ポストによると、米国を訪れるカナダ人は年間2000万人で、フロリダ、アリゾナ、カリフォルニアなどの州に200億ドル(約2兆8570億円)以上の金を落としている。ツーリズム・エコノミクスは、カナダの人々はトランプ米政権による関税に腹を立てているため、今年米国を訪れるカナダ人は400万人減少すると予測している。こうした状況を受けてカナダの航空会社は米国便の座席数を減らし、カリフォルニア州のリゾート地、パームスプリングスはカナダからの旅行客を誘致しようと歓迎の旗を通りに飾るなどしている。
ブルームバーグ通信はいま反米感情が高まっているのはもっともだと報じ、ワシントン・ポストは外国を旅行をする際の米国人向けのアドバイスに、カナダ人のふりをするのは解決策ではないとの皮肉をまじえた。