米国のドナルド・トランプ大統領は27日、関税収入が増えれば「多くの人の所得税は大幅に減額され、完全に撤廃される可能性もある」と述べた。一方、経済学者らはこの発言に懐疑的な目を向けている。
トランプ大統領は自身が創設したSNSのトゥルースソーシャルに、所得減税の対象を「年間収入20万ドル(約2900万円)未満の人々に焦点を絞る」と投稿した。米国勢調査局の統計によると、この金額は2023年の米国人の年収の中央値の4倍以上に当たる。
他国との交渉が難航する中、多くの関税が一時停止されているが、米国土安全保障省は4月1日以降、158億6000万ドル(約2兆3000億円)の関税と物品税を徴収した。これは前月比で約60億ドル(約8500億円)増えている。
トランプ大統領は、関税の効果で米国には新たな工場が次々と建設されており「すでに膨大な数の雇用が創出されている」と強調。「米国にとっては大もうけとなるだろう! 外国歳入庁が始動する!」と投稿した(訳注:トランプ大統領は国内の徴税を担当する内国歳入庁とは別に、外国からの関税の徴収に特化した新たな機関の創設を目指している)。
関税は所得税に取って代わるほど十分な収入をもたらすのだろうか?
それは不明だが、経済学者は懐疑的だ。関税が所得税を完全に置き換えられるという主張について、米シンクタンク外交問題評議会は、「米国の現在の輸入比率でも必要な歳入を生み出すのは数学的に不可能であり、まったく的外れだ」と一蹴した。同評議会の調査では、米国で所得額が下位90%に当たる国民からの税収は約5760億ドル(約82兆円)に上り、関税により対米輸出国が減少すると、この所得税収入を置き換えるのに十分な税収は生まれないと試算された。



