北米

2025.04.29 12:00

関税で「所得税撤廃」も、トランプ米大統領が持論 専門家は懐疑的

米国のドナルド・トランプ大統領。2024年4月24日撮影(Chip Somodevilla/Getty Images)

関税が米国にもたらす収入はどの程度なのか?

トランプ政権は、多くの国々との関税率を巡る交渉が続いていると説明しているため、この点も不透明だ。同大統領は1月、中国からの輸入品に10%の追加関税を課すほか、メキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を導入すると発言した。米国の元議員ら超党派で構成する「責任ある連邦予算委員会」は、新たな関税により今年の歳入が1400億ドル(約20兆円)増加し、2035年度までに1兆5000億ドル(約213兆円)の歳入が見込まれると報告した。だが、カナダとメキシコに対する関税のほとんどは一時停止されており、対中関税率は直近で合計145%にまで上昇している。

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米CNBCによると、ホワイトハウスで関税政策を主導するピーター・ナバロ大統領上級顧問は4月初旬、関税によって年間約6000億ドル(約85兆円)の税収が見込まれると述べた。これに対し、経済学者らは楽観的すぎると批判した。米エール大学予算研究所は4月15日時点で、今年これまでに課された関税により、2026~35年の間に2兆4000億ドル(約341兆円)の増収となるが、「6310億ドル(約90兆円)の動態収入への負の影響」が出ると推定している。

トランプ大統領は大統領選挙で再選を果たす前の昨年6月、共和党の会合で、関税収入によって米国の所得税が廃止される可能性について触れていた。報道によると、同大統領は当時、関税はすべての国民の所得税を撤廃するのに十分だと主張していたが、最近では収入の少ない国民の所得税を大幅に減らすことができるとの見方に転じている。同大統領は15日にも米フォックスニュースの番組で「関税収入が増えれば(所得税に)取って代わる可能性もある」と発言していた。

米紙ワシントン・ポスト、米ABCニュース、仏調査会社イプソスが25日に公表した世論調査結果によると、米国人の64%がトランプ大統領の関税政策を支持していないことが明らかになった。米国の成人2400人以上を対象にした同調査では、トランプ大統領の関税政策に不満を示した割合は、民主党支持層では96%に上り、共和党支持層でも25%を占めた。

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forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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