米海洋大気庁(NOAA)の調査船オケアノス・エクスプローラーの探査ロボットが、ハワイ・ホノルルの北西沖約1600キロの太平洋の海底で、第二次世界大戦中のミッドウェー海戦で旧日本軍に撃沈された米空母ヨークタウンの残骸の調査中に予想外の発見をした。なぜそこにあるのか不可解な「木製」の自動車がカメラに映っていたのだ。
ヨークタウンへの潜水調査は、より大型の無人探査機(ROV)を用いた海底マッピング調査の一環として、パパハナウモクアケア海洋国定公園内で4月19、20日に行われた。
空母に遺された謎多き車
カメラが最初に車の姿を捉えたのは19日のことだ。空母の左舷後部の格納デッキを調査していた時だった。NOAAの発表によると、調査チームは翌20日の潜水調査で車の特徴を観察し、陸上の協力者と共同で画像を分析。「この車は1940~41年に製造された黒のフォード・スーパーデラックス『ウッディ仕様』だろうと暫定的に判断した」という。
NOAAはこの車の発見を「驚き」だと表現している。
車のウッディ仕様とは、車体に木製パーツを多用したもので、愛好家に人気がある。ステーションワゴンのウッディ仕様は、手頃な価格と荷室の広さから1960年代にサーフィン文化と結びついたことで知られる。
今回見つかった車は何十年も海水に浸かっていたため状態はかなり悪いが、車種の特定に至る手がかりはいくつかあった。フロントガラスは中柱の入った2分割式で、ルーフはキャンバス地、バンパーはクロムメッキ仕上げで、車体背面にスペアタイヤが取り付けられており、ヘッドライトの上部にパーキングランプが配置されている点などだ。
ウッディ仕様の車の愛好者団体ナショナル・ウッディ・クラブの会員で、会報誌『ウッディ・タイムズ』編集者のロディ・サージアデスは、「ほぼ間違いなく」この車は1941年型フォード・スーパーデラックスだと断言。「とても興味深い発見だ」「あのフォードが話せたらなあ」と感慨を漏らした。
オケアノス・エクスプローラーのROVカメラでは、車のフロントナンバープレートに海軍の所有であることを示す文字を確認できた。NOAAは、艦長か乗組員が外国の港に寄港した際にこのウッディ仕様の車を使用していたのではないかとみている。「空母に搭載されていた記録はなかったので、なぜそこにあったのかは推測するしかない」と、米海軍歴史遺産司令部(NHHC)の広報担当者クリスティーナ・ヒギンズはメールで問い合わせに回答した。
NOAAはこの車について、いくつか疑問を提示している。
空母ヨークタウンはミッドウェー海戦に参戦する前、ハワイの真珠湾でわずか2日間の突貫修理を受けており、その後も沈没するまで格納デッキに車が収納されたままになっていた点にNOAAの研究チームは首をかしげている。「(被弾して)傾いた船体を立て直そうとする勇敢な努力の間に、なぜこの車は対空砲や艦載機と一緒に緊急投棄されなかったのか。助かることに願いをかけていた乗組員や士官たちにとって、この車は何か特別に重要な存在だったのだろうか?」
これらの疑問点には今のところ答えは見つかっていない。



