楽観主義の復活の兆し
心強いことに、日本には楽観主義を取り戻しつつある兆しも見えはじめています。例えば、アベノミクスのように、積極的な金融緩和や景気刺激策を通じてデフレ脱却を目指す政策が実施されました。その成果にはばらつきがあったものの、近年インフレ率は上昇し、一部の消費者は長年の慎重姿勢を和らげつつあります。さらに、コーポレートガバナンス改革により、企業は手元資金を収益性向上や成長戦略に活用することが求められるようになっています。
国内のスタートアップ投資も、過去10年間で大幅に増加しています。さらに、政府は評価額が10億ドルを超えるユニコーン企業を100社以上育成するための政策を打ち出しました。ウォーレン・バフェットをはじめ、SequoiaやNEA、Lux Capitalなどの大手VCファンドを含む海外投資家も、日本の比較的低いバリュエーションや将来の成長余地に魅力を感じ、投資への関心を高めています。また、日本の若い世代は、スタートアップを含む多様なキャリアパスに対して以前より積極的になっています。加えて、一部の分野では移民規制が緩和され、様々な視点を持つ多様な人材の流入も進みつつあります。
また、地政学的な懸念が高まる中、日本は半導体などの主要産業のリショアリングを進めると同時に、防衛費をGDPの2%へ引き上げています。これにより、産業プロジェクトや研究開発の活性化が期待されます。こうした動きは、「戦略的発展を通じて国家を強化する」という明治時代の考え方とも通じるものがあるのではないでしょうか。
日本の「第3幕」
日本は近代史の中で2度、大きく生まれ変わりました。ならば、3度目があっても不思議ではありません。日本の「第3幕」です。過去の2度の変革では、社会全体に広がる(時に非合理的とも言える)楽観主義が原動力となり、驚異的な飛躍を遂げました。現在、日本には悲観的な空気が漂っています。これは深刻な問題ですが、決して変えられないものではありません。政府が改革を進め、企業がリスクに恐れず挑戦し、若い世代が再び将来に希望を持てるようになれば、日本は豊富な資金と優れた人的資源を活かし、再び世界を驚かせることができるでしょう。
確かに、日本は大きな逆風にも直面しています。少子高齢化や多額の国債残高、長引くデフレ心理など、確かに課題は多いです。しかし、こうした課題こそが変革を加速させる「起爆剤」になり得るのです。例えば、労働力不足を受け、日本は外国人労働者の受け入れを拡大しはじめました。また、AI時代の到来も労働不足解消の好機と捉え、その活用に向けて積極的に取り組んでいます。さらに、地政学的な緊張の高まりを受け、新たな技術や国際的な協力関係への投資も進めています。このように、世界的な圧力が増している今こそ、過去の大改革を成し遂げたときのような「為せば成る」という楽観的精神が再び呼び覚まされるかもしれません。
国全体の意識や姿勢が重要であることは、歴史が証明しています。米国では、「非合理な楽観主義」が、一見不可能に思えるアイデアを次々と実現させてきました。そして日本もまた、最盛期には同じくらい大胆でした。もし社会や政府、企業が、未来を切り拓く情熱を取り戻せば、日本の可能性は計り知れません。明治維新から戦後の復興まで、日本は何度も再興の道を切り拓いてきました。そして今、日本は新たな章を迎えようとしているのかもしれません。「非合理な悲観主義」を捨て去り、明日を信じる力を再び呼び覚ます、その時がきているのです。
連載:VCのインサイト
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