日本のかつての楽観主義: 明治維新と戦後の高度経済成長
日本もまた、力強い楽観主義を原動力に発展した歴史があります。その変革の大きさを考えると、日本の楽観主義のほうがむしろ際立っていたと言えるかもしれません。最初の例が、1868年の明治維新です。江戸幕府の封建制度が解体され、新たに発足した明治政府により中央集権化が進められるとともに、西洋の技術が積極的に取り入れられるようになりました。世界の強国と対等に渡り合うことを目指し、急速な近代化を進めたのです。これは、大胆な賭けでしたが、不可能と思われたにもかかわらず、日本はわずか数十年で飛躍的な産業化を遂げました。そして1905年の日露戦争で、日本はロシアに勝利。アジアの国が西欧の大国を打ち破るのは近代史上前例のないことで、世界に大きな衝撃を与えました。日本にとっても、この勝利は明治維新の魂を象徴するものとなりました。「努力すれば日本も西洋列強に肩を並べられる」という、時に非合理的とも言える楽観主義的な信念です。
第二次世界大戦後、日本社会には再び力強い楽観主義が広がりました。主要都市が壊滅状態となり、経済も深刻な打撃を受け、日本にはそのまま絶望に打ちひしがれて沈んでいく可能性もありました。しかし、実際には経済成長にひたすら邁進する道を選んだのです。米国の支援と旺盛な勤労意欲に後押しされ、1968年には世界第2位の経済大国へと躍進しました。この戦後の「経済の奇跡」を支えたのは、社会全体に広がる揺るぎない自信と楽観主義でした。企業は研究開発に積極的に投資し、労働者はより良い生活を期待して長時間働き、多くの人が「明日は今日より良くなる」と信じていました。1980年代には、日本製の電子機器や自動車が、今の中国製品のように世界中の市場にあふれました。そして多くの人が、いずれ日本は米国を追い越すと本気で信じるようになったのです。
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