宇宙

2025.04.28 10:30

遠方銀河の稀有な共演、想像の上行く「アインシュタインリング」JWST撮影

重力レンズによってできる遠方銀河の円環状の像「アインシュタインリング」。中央部の真下と右上の2カ所に後方にある渦巻銀河の明るいコアが見えている(ESA/Webb, NASA & CSA, G. Mahler. Acknowledgement: M. A. McDonald)

重力レンズによってできる遠方銀河の円環状の像「アインシュタインリング」。中央部の真下と右上の2カ所に後方にある渦巻銀河の明るいコアが見えている(ESA/Webb, NASA & CSA, G. Mahler. Acknowledgement: M. A. McDonald)

明るく光る中央部の楕円体の周囲に渦巻く腕のような奇妙な構造がある、この不思議な天体は何だろう。楕円銀河の一種だろうか──この天体が1つの銀河に見えるのは、実は目の錯覚なのだ。はるかに遠く離れた2つの銀河が、アインシュタインリングと呼ばれる珍しい宇宙現象によって一体化して見えている。

「アインシュタインリング」の内側

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影した「今月の1枚」として最近公開されたこの画像には、まったく異なる2つの銀河が写っている。中央部分にあるのは、銀河団SMACSJ0028.2-7537に属する楕円銀河だ。緑がかった青色のコア(核)を中心に明るく輝く楕円体として見えており、2つの銀河の手前側に位置する。それでも地球から30億~70億光年の距離にある。一方、楕円銀河の外縁部に見えているが、実際ははるか後方にあるのは、渦状腕を持つ渦巻銀河だ。この銀河の渦状腕が伸びて手前の銀河に巻き付き、歪んだ環を形成しているように見える。

重力レンズとは

この風変わりな、極めて珍しい天体は、最も奇妙な自然の悪戯の1つである重力レンズによって生じたものだ。この場合、手前の銀河の重力場が非常に強いため、その周囲の空間が歪められた結果、背後の銀河からの光が曲げられて円環状になっている。この円環によって、背後に天体が存在し、その光が増幅拡大されていることがわかる。重力レンズは、はるか遠方にある天体の存在を推測し、その質量を測定するための最善の手段だ。

時空の歪み

この重力場による光の屈折は、物理学者アルバート・アインシュタインがその効果を予言したことから「アインシュタインリング」とも呼ばれている。アインシュタインの一般相対性理論では、宇宙を3次元の空間と1次元の時間を組み合わせた4次元(4D)時空として表現する。相対論は、4D宇宙に質量を導入すると何が起こるかに関する理論だ。質量が時空を曲げ、物体がどのように移動するかをその時空が制御する。その結果として重力が発生する。従って、質量を持つものはすべて(さらに光も含め)曲がった時空を通ると曲げられるわけだ。アインシュタインの予言のどおり、初めて完全なアインシュタインリングが1998年、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)によって発見された。



forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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