ヘルスケア

2025.04.28 10:00

CT検査でがんになりやすくなるのか? リスク分析結果が明らかに、米医学誌

Getty Images

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医学誌「米医師会紀要(JAMA)」は、コンピューター断層撮影装置(CT)が原因で、米国では将来10万3000件のがんが発生する可能性があるとする論文を掲載した。この数字は、新規がん診断の5%に相当するという。

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)は、過去3年間に複数の医療機関が行ったCT検査の記録を用いてリスクを分析した。それによると、2023年だけで米国で実施されたCT検査は9300万件に上り、それが原因で将来発生するがんの件数は10万件を超えると推定された。

超音波や磁気共鳴画像装置(MRI)など、他の画像診断法では放射線が使用されないのに対し、CT検査は電離放射線を用いる。電離放射線は、肺がん、乳がん、大腸がん、血液がんをはじめ、各種のがんを引き起こす危険因子であることが知られている。

だが、今回のUCSFの研究に関して考慮すべきことは、現実の結果ではなく統計上のモデルに基づいているということだ。実際、これまでにCT撮影ががんに直接結び付くことを示す研究結果は示されていない。言い換えれば、CT撮影とがんの関連性は、実際の臨床現場では示されていないものの、理論上のリスクがあるということだ。

CT検査に対する懸念は、放射線が細胞内のデオキシリボ核酸(DNA)に損傷を与え、生涯に何度もCT撮影を受けるとがんのリスクが累積していく可能性があることに基づいている。とはいえ、1回のCT撮影で受ける放射線量は極めて少ない。例として、腹部と骨盤のCT撮影を考えてみよう。平均的な成人の場合、10ミリシーベルトの線量を照射する。この線量は、人が3年間に自然環境から浴びる放射線量に相当する。これは、CT検査によって個人と公衆にもたらされる利益と比較すると、極めて小さい線量だと言える。

CT検査は、がんが体内の別の部位に転移する前に検出することで人命を救う役割を果たすほか、侵襲的処置(訳注:注射や手術など、体内に直接的に処置を施す治療)の実施回数を減らし、患者の入院期間を短縮することが実証されている。CT撮影は、内部損傷の診断や生体検査の指針、病気の進行の監視に欠かせない技術だ。脳卒中などの緊急事態では、CTによる画像診断が生死を分けることもある。

CT技術はここ10年で進化を遂げてきた。現代の機器は使用する放射線量が少なく、肺がんなどのスクリーニング検査では、身体に照射される放射線量を最小限に抑えるために、特定の低線量技術が用いられている。例えば、肺がん検査のために行われる胸部の低線量CT撮影では、1.5ミリシーベルトの放射線が照射される。これは、人が環境中で浴びる放射線量の約半年分に相当する。

一般には、CT撮影に対し、過度の恐怖が強調されているかもしれない。ただし、CT撮影には電離放射線が伴うため、診断のために利用する際には、医師と患者の双方が注意する必要があることは確かだ。臨床的な疑問に答えられる放射線を使わない画像診断法があれば、それらの選択肢を検討すべきだ。また、医学誌に掲載される今回のような研究が、画像診断法の利点と欠点について医師と患者の率直な話し合いを促し、患者が自身の健康について十分な情報を得た上で選択できるようになることが望まれる。

米放射線学会は「国民は、生命を救うために必要な医療画像診断を諦めるべきではなく、これらの検査の利点とリスクに関し、医師と話し合いを続けるべきだ」としている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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