リーダーシップ

2025.05.02 09:45

私たちはいつも「選ばされている」…本日のおすすめを選んでしまうワケ

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一方、麻痺したり疲れやすくなったりする最大の要因は「時間」です。

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一日中決定を繰り返してきた夜の時間帯は脳に疲労が溜まり、すでに「決断疲れ」になっている危険性が高いと言えます。そんなときに何かを決めようとしても挫折したり、「決定麻痺」に陥りやすくなったりします。

「大切なことは朝、決断せよ」……なんて言うと、エリート向けのビジネス書みたいですが、行動経済学的にも的を射ているというわけです。

裁判所で判決が下されるときに、裁判官の「決断疲れ」が被告人の人生を左右することもある、という調査結果もあります。イスラエルの裁判所で行われた、囚人の仮釈放審問と時間帯の調査によると、仮釈放が認められやすいのは、朝イチ、昼休憩後、午後休憩後の3つの時間帯だったそうです。それ以外の時間帯は「決断疲れ」により、あまり考えずに済む判断(刑務所に入れたままにしておく)を選びやすくなる傾向が見られました。

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それほど、「決断疲れ」が私たちの選択に与える影響は大きいということです。

これをうまく利用すると、例えば、上司の決裁が必要だけど、粗探しや突っ込みはされたくない、とにかく承認のハンコだけ押してほしいという場合は、上司が「決断疲れ」に陥っている可能性の高い夕方の時間帯に案件を持ち込めば、深く考えずにOKを出してもらえるかもしれません。

同じように、社内の役員会議などで稟議を通す、商談先に提案をするという場合も、相手が「もう考えるのが面倒くさい」という状態になっているタイミングを狙えば、通る可能性が高くなるかもしれませんね。

商売の売り手側から考えると、消費者に余計な判断をさせずにどんどんモノを買わせたいなら、セールのスタートを夜中に設定するといい、ということですね。Amazonプライムデーの開始が夜中の0時なのも、そういった理由からかもしれません。
実際、仕事などで疲れて帰ってきて、深夜にスマホでついポチッと買い物をしてしまった経験がある方は多いと思います(私もそうです)。

「選びたいこと」と「選ばなくていいこと」を決めておく

もう1つ付け加えると、「自分にとって価値が低いことは最初から選択や判断の手間を省く」というやり方もあります。アップルの創業者、故スティーブ・ジョブズ氏が同じ黒のタートルネックとジーンズを何十着も保有して、いちいち着るものを選ばなかったのは有名な話です。

これは、自分にとってあまり価値がないことを選ぶ無駄を減らし、減らした分の時間や思考のリソースを、より価値があることに使えるようにする方法です。

例えば、仕事の合間のランチタイムをどのように捉えるかは、考え方が分かれるのではないでしょうか。

ほとんどの職場では、お昼休みは1時間くらいでしょう。その1時間の中で、職場からの移動時間がかかるとしても、毎日いろいろなお店を探して、おいしいものを食べたいと考えるのか。それとも、近場で簡単に食べられるお店にして、ランチの内容より休息時間を確保することを優先するのか。

時間も思考も有限ですので、その中で自分が「何を選ぶことに価値を感じるのか」を明確にし、より価値が高いものにリソースを使えるようにしておくと、自分にとってベストな選択と決断ができるようになると思います。


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文=橋本之克

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