現在、キュリオシティの北西3730kmに位置するジェゼロクレーターには、姉妹機であるパーサヴィアランスが探査を続けている。同機が採取した試料は複数のチューブに収められ、すでに火星地表に設置されている。これを別の後続機が回収して、地球に持ち帰るのだ。
ただし、このミッションは非常に複雑で難易度が高い。サンプルチューブを回収する機体と、チューブを火星周回軌道に打ち上げる上昇機、さらにはそのチューブを受け取って地球に届ける帰還機などを連携させる必要がある。当初は2027年から28年の実施開始が予定されていたが、現時点で同計画は大幅に遅延しており、最終的なプランさえ決定していない。しかもその予算は大幅に超過しつつある。
そのため、この計画はトランプ政権によって中止されようとしている。ホワイトハウスが4月10日に各省庁に送付した2026年度予算の草案によると、NASAの次年度予算は250億ドル(約3兆5750億円、1ドル143円換算)から200億ドル(約2兆8600億円)に削減される見込みであり、 これは前年比マイナス20%の大幅カットを意味する。とくに、火星サンプルリターン計画を含む科学プログラムの予算カットが極端であり、昨年度予算の75億ドル(約1兆725億円)から39億ドル(約5577億円)へと、48%削減される予定だ。
一方、中国も同様の計画を予定しており、2028年に無人探査機「天問3号」を打ち上げ、2030年には火星サンプルを地球に持ち帰ることを目指す。米国は、有人月面探査においては中国に対抗する意思を明確にしているが、史上初の火星サンプルリターンは中国に譲り、財政圧縮を優先する可能性が高い。
マスク氏が率いるスペースX社では、人類の火星入植を目指し、史上最大の宇宙輸送システム「スターシップ」の開発を進めている。また、同じくマスク氏がCEOを務めるテスラ社では、Tesla Bot(テスラボット)と呼ばれる二足歩行ロボットの開発を進めており、その試作機は「Optimus(オプティマス)」と名付けられた。
3月15日にマスク氏は、「スターシップは2026年末、オプティマスを乗せて火星に向けて出発する。これらの着陸がうまくいけば、有人着陸は早ければ2029年に始まるかもしれない、ただし2031年のほうが可能性は高い」と、Xにポストした。
マスク氏の宣言どおりに事が進めば、米国は2030年に火星に降り立つ可能性がある。であれば、火星サンプルリターンで中国に先を越されることなど、微々たる問題なのかもしれない。


