成果より「人間」至上主義
これまで救われなかった若き才能たちを輝かせたい──。そうしたコンセプトのもとに、BMSGは21年にボーイズグループのBE:FIRST、23年にMAZZELをデビューさせている。商業的な成功には自信があった。ただ一方で、怖さもあったという。「成果至上主義より人間至上主義」を意識していたからだ。
「オーディションを受けたこと、BE:FIRSTになったりならなかったりすることで、ひとりの人の人生が変わるじゃないですか。そこに僕が携わることでその人の人生を“正解”に導けるのか。その結果はセールスのようにすぐ目に見えるかたちではわからないわけです。サラリーマン経験ゼロの僕ひとりでの起業でしたが、だからと言って経営実務においても失敗はできないので、プレッシャーはすごかったですね」
BMSGに関わることが誰かの人生のプラスになるのか。それは本人にしか判断できないが、少なくともBMSGが若い才能の人生を変える機会を提供していることは確かだ。今年は新たなボーイズグループのオーディション「THE LAST PIECE」の開催が予定されている。コンセプトは「すべての10代と、かつて10代だったすべての人へ」。このコピーに込めた思いをSKY-HIはこう語る。
「日本は10代の自殺率が高い。自分が10代のころは渋谷が若者の街でしたが、今の子たちにはそうしたリアルな居場所もない。もともとエンターテインメントは10代に夢の見方を教える機能がありましたが、機能不全を起こして若者が夢を見にくい世の中になっているんです。自分も冷笑系のシニカルなカルチャーも嫌いじゃないですよ。でも、それがマジョリティになる世の中は何かが破綻している。『THE LAST PIECE』で、10代に夢の見方を伝えたいし、かつて10代だった人にもそれを思い出してほしいと思っています」
日本のエンタメを「本来の姿」に
BMSG設立から約4年半。ここまでエンタメ業界に根を下ろせばスタートアップとして大成功といっていい。ただ、本人の自己評価は「起業時に想像していた最低の想定と、最高の想定の間くらい」と、意外に冷静である。
そもそもSKY-HIは経営者としてどこに目標を設定していたのか。最初のメルクマールは、「日本国内においてBMSGの地図ができること」だった。
「たまたますごい才能に出会って単体のアーティストにスポットライトが当たるというのではなく、組織としてこれまでの芸能の歴史を塗り替えて地図をつくりたかった。競合排除の様相が強かった国内ダンス&ボーカルシーンに事務所の垣根を越えたコラボをもち込んだD.U.N.K.(DANCE UNIVERSE NEVER KILLED)もそのひとつです。23年、男性のダンス&ボーカルグループが出演しにくいとされていた『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に、BE:FIRSTが初出演したときは、日本の芸能が変わった瞬間だったかな」


