アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは2024年、株主宛の書簡で、自分がアマゾンに30年近くいる理由を説明した。1997年にアマゾンの一員になったとき、同氏は、28年もそこで働き続けるとは思っていなかった。実際、同氏は友人たちに、自分の父親は同じ会社で45年間働いたが、何十年も1つの会社にとどまることは「自分には絶対できないだろう」と語っていた。
しかしジャシーはこの書簡で、アマゾンの業績を称賛した上で、自分がこの巨大eコマース企業に長年とどまり続けている理由を率直に述べている。同氏は、「間違いなく、私は大ファンの一人だ」と書いた上で、アマゾンにこれほどの忠誠心を持つ3つの理由を詳述している。
この3つの理由は、自身のキャリアについて考えているすべてのビジネスリーダーやプロフェッショナルに貴重な視点をもたらすものだ。
アマゾンの「なぜ、と問う文化」
ジャシーのモチベーションを深掘りする前に、アマゾンの「なぜ、と問う文化」を理解することが重要だ。この考え方は、ビジネスとイノベーションに対するアマゾンのアプローチの根底にあるものだ。
「アマゾンは、なぜ、と問う企業だ」とジャシーは述べている。「私たちは絶えず、なぜそうするのか、なぜそうしないのかと問い掛けている。これは、問題を分解し、根本原因を突き止め、阻害要因を理解し、最初は突破できないように見えた扉を開く助けになる」
こうした絶え間ない問い掛けは、書籍の販売からKindleの開発、AWSの立ち上げ、プライム・ビデオの開発、「Buy with Prime」の導入まで、アマゾンの最も変革的なイノベーションの多くを触発してきた。
アマゾンにとどまり続けている3つの理由
では、才能ある経営者が、なぜ同じ会社で30年近く働き続けているのだろう? ジャシーは3つの理由を挙げている。
1. 徹底的な顧客へのこだわり
ジャシーは株主への書簡に、「私たちほど徹底的に顧客を優先する企業はおそらく存在しないだろう」と書いている。「多くの企業が口ではそう言うが、実行する企業はほとんどない」
「顧客優先」は、単なる美辞麗句ではない。こうした顧客中心のアプローチのおかげで、アマゾンは常に、米国の顧客満足度指数(ACSI)で上位にランクインしている。顧客第一の戦略は、財務的な成功にもつながる。Accenture(アクセンチュア)の調査によれば、顧客、従業員、社会にすばらしい体験をもたらすことに集中している企業は、同業他社に比べて、少なくとも6倍のペースで収益が伸びている。
キャリア形成のヒント:
自社において、顧客中心主義がどのように実行されているかを考えてみよう。顧客価値の創造を本当に優先している企業は、より意味深い、持続可能なキャリアの機会を提供している。
現在または将来の雇用主を評価する際には、目を引く企業理念に注目するのではなく、実際の意思決定プロセスを調べてみるべきだ。日々の努力が顧客の生活向上に直結する職場で働けば、より深い目的意識が育まれ、業界や役割を超えた価値のあるスキルを身につけることができる。



