これからの20年に向けた成長戦略
ラウンドテーブルに集まったジャーナリストから、YouTubeが今後グローバルな視点から重点を置く戦略についても次々に質問が飛んだ。モーハン氏は大きな3つの戦略を言及した。
ひとつはリビングなどに設置された家庭のスマートテレビで、YouTubeを視聴するユーザーが増えていることから、YouTubeをテレビで見るための機能をさらに使いやすく、充実させる計画だ。
YouTubeの調査によると、テレビ画面でYouTubeのコンテンツが視聴される回数は、2020年から3年の間に130%以上増加したという。テレビによる視聴から大きな収益を獲得しているクリエイターの数も、前年比で30%増えた。これらはグローバルの調査結果を分析したトレンドだ。日本国内の動向に目を向けると、同じ期間に視聴時間が約2倍に拡大している。また2024年6月時点で、YouTubeにログインしたユーザーが毎日平均で2.5時間「YouTubeをテレビで見ている」こともわかったという。
スマホなどモバイル端末による視聴に最適化したことで、YouTubeショートの人気は勢いよく定着した。テレビにもまだ、リビングルームに集う家族が揃って見られるような「コンテンツづくり」やインターフェースの改良を進める余地がある。
YouTubeは独自にオリジナルコンテンツの制作を行うのではなく、「クリエイティブ界のスタートアップを支援する方針」に舵を切っている。今回のプレスツアーでジャーナリスト一堂が訪れたCrunchLabs(クランチラボ)のように、良質な子ども向けのサイエンス番組を制作し、YouTubeチャンネルに公開したところ、2024年の創業後から瞬時に「ハリウッド級」の人気スタジオ(チャンネル)にまで躍進したクリエイターが米国には存在している。同様のクリエイターが世界中で生まれるように、「YouTubeができることはすべて取り組みたい」とモーハン氏は力強く語った。
そして3点目の重点戦略は、先にも触れた「AI活用」だ。
YouTubeは誕生から20年間、一貫してすべてのクリエイターに表現の場所を提供する「クリエイター・ファースト」のミッションを実践してきた。モーハン氏はYouTubeがソーシャルメディア、あるいは伝統的な放送局ではなく、誰もがコンテンツを視聴したり、そして自ら制作・共有できる自由なストリーミングプラットフォームなのだとしながら、次の20年間に向けた抱負を次のように語った。
「YouTubeでは15秒のショート動画から15分のVlog、さらには15時間のライブ配信まで、あらゆる形態の映像を発信、あるいは視聴できます。これこそが、YouTubeがいつまでも大切にしていくべき存在価値なのです」
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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