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2025.04.30 16:15

「行政依存」のまちづくり脱却。市民がつくる、スモールパブリックという“余白”

これまで展開されてきた「地方創生」の多くは、行政主導による短期的な事業や外部委託に依存した構造から、いまだ抜け出せずにいる。制度としての地方創生は全国に広がったものの、「事業は終わった。けれど、人も仕組みも残らなかった」という声が、各地から上がり続けている。

そんななか、地域に住む一人ひとりが“当事者”としてまちの未来を語り、動かす「市民主体」のあり方を模索する動きが、静かに広がり始めている。「まちづくり」は専門家や行政のものではなく、自分たち自身の手に取り戻せるものなのではないか──。

今回の特別対談では、震災後の東北で出会い、それぞれのフィールドで“市民主体のまちづくり”を探求し続けてきた「食べる通信」や「ポケットマルシェ」を通じて都市と地方の分断を超えようとしてきた株式会社雨風太陽 代表取締役社長・高橋博之氏と、渋谷から全国に展開する官民共創型プラットフォーム「つなげる30人」の仕掛け人であり、一般社団法人つなげる30人 代表理事・加生健太朗が10年の時を経て再会した。

高橋博之プロフィール

1974年、岩手県花巻市生まれ。青山学院大卒。代議士秘書等を経て、2006年岩手県議会議員に初当選。翌年の選挙では2期連続のトップ当選。震災後、復興の最前線に立つため岩手県知事選に出馬するも次点で落選、政界引退。2013年NPO法人東北開墾を立ち上げ、地方の生産者と都市の消費者をつなぐ、世界初の食べもの付き情報誌「東北食べる通信」を創刊し、編集長に就任。2015年当社設立、代表取締役に就任。2023年12月、日本で初めてNPOとして創業した企業が上場を実現するインパクトIPOとして、東京証券取引所グロース市場へ株式を上場。2024年11月には、内閣官房 新しい地方経済・生活環境創生本部が開催する「新しい地方経済・生活環境創生会議」の有識者構成員に就任。
著書に、『だから、ぼくは農家をスターにする』(CCCメディアハウス)、『都市と地方をかきまぜる』(光文社新書)、『関係⼈⼝ 都市と地⽅を同時並⾏で⽣きる』(光文社新書)が、共著に『人口減少社会の未来学』 (内田樹編、文藝春秋)、『共感資本社会を生きる』(ダイヤモンド社)がある。


震災復興の現場からの教訓

加生:最初に高橋さんとお会いしたのは、確か2013年8月末の仙台の夜でした。ちょうど人生に迷っていた時期で、一度、震災後の被災地に行ってみたいと思い、いろいろな方に相談していたところ、「高橋博之さんには会っておいた方が良い」と言われ、引き合わせていただいたんです。

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文= 加生 健太朗/写真= 佐々木つぐみ

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