加生:「つなげる30人」って、いわば「友達以上、同僚未満」の関係性なんです。友達とは気軽にバカ話はできるけど、未来のことを語るのってどこか照れくさい。同僚とは一緒に仕事はしても、本音やビジョンまで共有することって、なかなかないですよね。そのちょうど間にあるような、“未来を語れる関係性”が、つなげる30人の空気感だと思っています。
高橋:あえて“つながる”じゃなくて“つなげる”にしてるのも、意味があるんだよね。
加生:そうなんです。“30人がつながる”のではなく、“つなげる人が30人いる”。人・お金・情報といったリソースをつなげるハブが各地に30人いることで、いろんなことが起きていく、という発想なんです。
ハブの役割って本当に大きいし、負担も大きい。その負担を30人で分散する構造でもあります。渋谷では2016年からスタートして、我々は主に名古屋・京都・広島・横浜など都市部へ展開し、我々はボトムアップ型のアプローチで継続してきました。
外部委託から地元主導へ──敦賀から得た「地方創生2.0」のヒント

加生:最初は「渋谷だからできるんでしょ?」「都市だからできるんでしょ?」ってよく言われていました。それに対して、「そうじゃない」っていうのを、実践を通じて証明する必要があった中、御縁があって、今は北陸新幹線の終着駅となった人口約7万人の福井県敦賀市で、「PRに加えて、人材発掘と育成が重要」と考え「つなげる30人」を導入する機会が生まれました。
高橋:所謂JC(青年会議所)や商工会議所の青年部みたいな地域のコミュニティがある中で、なぜあえて「つなげる30人」だったのかな。
普通のサラリーマンやNPO職員、行政職員が入れる“もう一つの入り口”になってるってことなのかな。
加生:まさにそうだと思います。敷居の低さと多様性があるっていうのは、「つなげる30人」の一つの特徴だと思います。敦賀では、最初は外部に頼ってましたけど、僕らは一年目は僕が100%、二年目は30%、三年目には10%っていう感じで三年かけて地元に引き継いでいくプランを立てました。
高橋:具体的にはどんな支援をしているの?
加生:3つあります。1つ目は人の集め方への助言。2つ目は、月1回4時間×6回(半年)のプログラム設計とファシリテーション。3つ目は、そこから生まれたプロジェクトへの伴走ですね。
高橋:それを行政が主体的に導入しようとしたのがすごいよね。依存構造そのものが、日本全体の近代化戦略だったからね。アメリカに依存、原発に依存、中心に依存——それが今、限界に来てる。
これまで依存することが合理的で、みんなその“依存”によって成長してきた。その成功体験があるからこそ、求められていることと真逆のベクトルに舵を切るって、やっぱり大きな挑戦なんですよね。

加生:僕らがこの10年、「地方創生」を特に意識せずに取り組んできたことが、結果的に「地方創生2.0」に通じているんだという実感があるんです。
先に気づいて始めた立場だからこそ、「1.0」の焼きましにならないように、ひとつの“モデル”として、先例としてちゃんと共有し、単発の成功事例ではなく“文化”として根付かせていく責任があるんじゃないかと思っているんですよね。それが僕らの責務なんじゃないかと思っています。
高橋:いや、本当におっしゃる通りで、これはもう日本にとって一番大きな課題。俺もずっと、"観客席にいる人たちがグラウンドに降りないと、この国はもう回らない"って言ってきたんですけど、それが現実になってきている。


