2025.04.25 11:30

「世界最大の盗品」を収蔵する大英博物館、それでも訪れる価値はあるのか?

英ロンドンの大英博物館で、古代ギリシャの胸像をスマートフォンで撮影する見学者。2023年8月23日撮影(Leon Neal/Getty Images)

英ロンドンの大英博物館で、古代ギリシャの胸像をスマートフォンで撮影する見学者。2023年8月23日撮影(Leon Neal/Getty Images)

古代エジプトのロゼッタストーンから古代ギリシャのエルギンマーブルに至るまで、世界で最も優れた遺物の数々を収蔵する大英博物館は、ロンドンで最も人気のある観光名所の1つとなっている。

だが、その畏敬の念を起こさせる収蔵品の背後では、植民地主義や所有権争いを巡る論争が今日まで続いている。では、現代の観光客は大英博物館をどうとらえるべきなのだろうか? この象徴的な博物館をロンドン旅行の旅程に組み込む価値はいまだにあるのだろうか?

数々の論争にもかかわらず、大英博物館は文化の試金石であり続け、人類の歴史を巡る旅にいざなっている。多くの旅行者にとって、同博物館はロンドンにいながら、他では決して見ることのできない遺物に出会う貴重な機会を与えてくれる。

収束しない所有権争い

大英博物館の論争の中心は、所有権の問題だ。エルギンマーブルとして知られる古代ギリシャ・パルテノン神殿の彫刻や、ベナン王国(現ナイジェリア)のブロンズ像など、同博物館の所蔵物の中でも特に有名な作品は、英国が植民地主義時代に疑わしい状況下で入手したものが多い。

ギリシャやナイジェリアなどの国々は、これらの文化財は同意なく持ち去られたもので、自国に属するものだと主張し、長年にわたり返還を要求してきた。実際、多くの人々がこの主張に同意している。人権問題を専門とする英国のジェフリー・ロバートソン弁護士は、大英博物館の幹部らを「世界最大の盗品の受取人」と呼び、同博物館の収蔵品の多くは、英国が植民地主義時代に支配していた民族から略奪したものだと非難。さらに、大英帝国時代の戦利品の大部分は「公の場に展示すらされていない」と指摘した。

大英博物館側は、エルギンマーブルはオスマン帝国の許可を得て合法的に入手したもので、1816年に英議会の委員会が取得の合法性を確認し、同博物館が正式な所有者となったと主張している。同博物館は、ギリシャのアクロポリス博物館とも良好な関係を築いており、研修や職員の交流で協力し、古代彫刻や博物館の展示などに関する専門知識を共有していると説明した。

大英博物館のジョージ・オズボーン理事長は、「この世界的な大英博物館は、多くの世代にわたる献身的な努力のたまものだ。それを一世代の軽率な行為によって解体してはならない」と述べ、遺物の返還を求める声に抵抗している。大英博物館の幹部は英政府の指揮の下、文化協力や所蔵品の一時的な貸し出しについて限定的な対話を開始した。だが、こうした取り組みも、歴史的な倫理問題に対処するには不十分だと考える批評家も多い。

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翻訳・編集=安藤清香

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