政治

2025.04.25 12:00

トランプ政権「国防総省がやった」 移民送還めぐる裁判所命令違反に新たな釈明

ベネズエラの犯罪組織のメンバーだとして米国から強制送還され、エルサルバドルの首都サンサルバドルで航空機から降ろされる男性。2025年3月16日撮影(El Salvador Presidency / Handout/Anadolu via Getty Images)

ベネズエラの犯罪組織のメンバーだとして米国から強制送還され、エルサルバドルの首都サンサルバドルで航空機から降ろされる男性。2025年3月16日撮影(El Salvador Presidency / Handout/Anadolu via Getty Images)

米ドナルド・トランプ政権は23日、連邦裁判所が差し止め命令を出したにもかかわらず移民をエルサルバドルに強制送還した理由について、新たな釈明を繰り出した。強制送還を実行したのは裁判所命令で名指しされていない国防総省であり、したがって移民の誤送還問題で被告とされている国土安全保障省は、司法命令に違反していないというものだ。

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トランプ政権はこの日、マサチューセッツ州の連邦地裁に対し、移民に事前通知せず法廷での異議申し立ての機会も与えずに「第三国」に送還することを禁じた同地裁の一時差し止め命令に反して、複数の移民が強制送還されたことを認める文書を提出した

しかしホワイトハウスは、強制送還を実行したのは国防総省であり、差し止め命令で被告となっている国土安全保障省およびその関係者ではないため、米政府は裁判所命令に「違反していない」と主張している。

トランプ政権はまた、国防総省による強制送還は国土安全保障省が「指示したものではなかった」とし、移民を移送した航空機にも国土安全保障省の職員は搭乗していなかったと強弁。その上で、国防総省は差し止め命令の当事者ではないと主張した。

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争点となっている差し止め命令では、国土安全保障省と「そのすべての職員、係官、従業員、法定代理人、承継人、譲受人、およびこれらの者と共同ないし関与して行動する者」を適用対象としている。

この訴訟の原告代理人を務めるトリナ・リアルミュート弁護士は24日、フォーブスの取材に、トランプ政権が今回提出した書類は「国土安全保障省が地裁命令に明確に違反したことを証明するものだ」と指摘。強制送還に国防総省が関与したとされる点は「深く憂慮すべき」だとし、「司法命令に明らかに背いた政府の責任を裁判所が追及することを願う」と述べた。

この訴訟を担当するブライアン・マーフィー判事が、トランプ政権の主張を受け入れるかどうかは不明だ。受け入れられなければ、トランプ政権は司法命令への「故意の不服従」を問われる可能性がある。

首都ワシントン連邦地裁のジェームズ・ボアズバーグ判事は16日、トランプ政権が「敵性外国人法」に基づく強制送還を差し止める裁判所命令に違反して送還を強行したのは「法廷侮辱罪」に該当するとして、刑事訴追の可能性を警告した(なお、トランプ政権は不正行為を否認している)。エルサルバドルに誤送還され、トランプ政権が「手違い」だったと認めたメリーランド州の男性キルマー・アブレゴガルシアの弁護団も、米国への帰還に取り組まない政府関係者を法廷侮辱罪に問うよう求めているが、同州連邦地裁のポーラ・ジニス判事はまだ判断を下していない。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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