デジタルコンテンツの無断転載、あるいは生成AIモデルの学習を目的とする無断使用がクリエイターの著作権を侵害する問題が後を絶たない。アドビは2019年に「コンテンツ認証イニシアチブ(コンテンツ認証イニシアチブ=CAI)」を立ち上げ、テクノロジーの視点からクリエイターの著作権保護に取り組んできた。
同社はロンドンで開催したAdobe MAX Londonで、誰でも無料で使えるウェブアプリ版の「Adobe Content Authenticity」を発表した。これはデジタル作品に「コンテンツクレデンシャル(Content Credentials)」という形で著作者に関する情報や利用ポリシーを含むメタ情報を埋め込み、コンテンツの信頼性とクリエイターの権利を確保するための無料ツールだ。
アドビの代表としてCAIの活動をリードする、コンテンツ認証イニシアチブ担当シニアディレクターのアンディ・パーソンズ氏にアプリが生まれた背景を聞いた。

デジタルコンテンツの不正な改ざんを防ぐ無料ツール
パーソンズ氏は、クリエイターが自身の作品に署名する権利を持つべきだという声が長らく寄せられてきたと振り返る。アドビではデジタルコンテンツの来歴を明らかにし、近年ではそれが生成AIも介してどのように作られたものなのかを明らかにするため、自社製品におけるコンテンツ認証のサポートを拡大してきた。
コンテンツクレデンシャルの理念を実現するため、アドビはまず画像編集ソフトのAdobe PhotoshopやAdobe Lightroomに代表される自社製品にこれを付与する機能を組み込んできた。今回、正式に公開されたウェブアプリ版「Adobe Content Authenticity」は、アドビ製品を持たない「すべてのクリエイターが利用できる」ことを開発の目的としている。
本アプリは数カ月間プライベートベータ版として、アドビユーザーのフィードバックを得て開発が進められた。そして、いよいよ4月下旬からパブリックベータ版として公開される。パーソンズ氏は「アーティストが写真や絵画にサインしたり、彫刻に名前を刻んだりするのと同じように、誰でも自身が制作したデジタルコンテンツに署名ができるようになる」とアプリの価値を説く。
