ウォルマートとターゲット、ホーム・デポという米国を代表する3つの小売業者の幹部らがホワイトハウスを訪れてトランプ大統領と会談し、関税政策に反対する立場を説明した。ブルームバーグによると、これらの幹部は、関税が消費者物価を押し上げ、サプライチェーンに混乱をもたらし、供給不足を引き起こす可能性があると警告している。
ロイターによると、ウォルマートの広報担当者は4月21日の会談後に「大統領とそのチームと建設的な会議ができた。見解を共有する機会を得られたことを感謝している」と語った。ターゲットやホーム・デポの広報も、前向きな話し合いができたと述べている。
トランプ政権は中国を除く貿易相手国を対象に上乗せ関税の適用を90日間にわたり一時停止させ、その間に外国政府や企業との交渉を行っているが、4月初めに記者団に対しれ「企業の声にも耳を傾ける。柔軟性を示す必要がある」と述べていた。
米国の小売業界は総額8兆5000億ドル(約1210兆円)の市場規模を持ち、1億3200万世帯の生活を支えている。提案されている相互関税が発動されれば、広範な物価の上昇を招く恐れがある。全米小売業協会(NRF)は、関税が米国人の購買力を年間最大780億ドル(約11兆1000億円)押し下げると試算している。関税の対象となるのは衣料品や玩具、家具、家庭用電化製品、靴、旅行用品の6カテゴリーだ。この試算には昨年、家庭外での個人消費として1兆5000億ドル(約214兆円)が費やされたと報告された食品や飲料は含まれていない。
ウォルマートの場合、販売商品に占める輸入品の割合は約33%で、関税の影響は比較的小さいが、中国とメキシコが最大の輸入元となっている。ターゲットは約50%を輸入に頼り、自社ブランド商品のうちの30%が中国から輸入されている。一方、ホーム・デポは商品の50%を北米で調達しているが、そのうちの何割がカナダ製なのかを明かしていない。
「関税による負担は最終的に、価格の上昇というかたちで消費者の懐にダメージを与えることになる」とNRFのサプライチェーンおよび通関政策担当副会長のジョナサン・ゴールドは声明で述べた。
小売業のサプライチェーンへの懸念に拍車をかけているのが、衣料品や家具、家庭用製品など消費財の輸入量が2025年5月に大幅に減少し、その傾向が年末まで続くという報告だ。NRFは年内に15%以上の総輸入量の減少を見込んでおり、小売店で一部の商品の欠品が生じる可能性があると警告している。
米国アパレル靴協会(AAFA)のスティーブ・ラマーCEOはCNBCの取材に対し、「トランプ大統領の誤った関税政策は、価格の上昇や雇用の喪失、商品の不足、企業の倒産などのさまざまな困難を米国経済にもたらすことになるだろう」と述べている。