ナスダックに上場する米国最大の警察向けテクノロジー企業Axon(アクソン)は4月22日、人工知能(AI)を用いた車両のナンバープレート読取装置や車両監視テクノロジーを含む新たな製品群を発表した。これにより、同社の競合でアンドリーセン・ホロウィッツらの出資を受ける評価額が75億ドル(約1兆700億円)の監視ツールのスタートアップ、Flock Safety(フロック・セーフティ)との競争が激化する見通しだ。
Axonはすでに警察車両に搭載されるナンバープレート読取装置を販売しているが、今回発表された新製品はFlock Safetyの製品と同様に街灯に設置可能になっている。このツールは、車両のナンバープレートだけでなく、車両の外観を記録可能なため、「ボンネットにへこみのある青いメルセデス」といった詳細な条件を指定して捜査中の車両の検索が可能になる。
今回のAxonの発表は、同社とFlock Safetyとのパートナーシップが決裂してから約2カ月後のタイミングで行われた。以前は両社のシステム間で警察がデータを共有可能だったが、この関係は解消された。
AxonのCEOであるリック・スミスは、Flock Safetyが顧客に対して自社製品への移行を強要し、統合のために過剰な料金を請求したり、他社製品とのデータ統合を困難にしたりしていたと非難し、「彼らのツールを推奨したことを恥じている」と述べた。
これに対し、Flock Safetyの創業者でCEOのギャレット・ラングリーは、Axonこそが「オープンで協力的であることに関心がなくなった」と反論し、スミスの発言を「根拠のない中傷」と断じた。
Axonの新製品のひとつは、Flock Safetyが2017年の創業以来専門としてきた街灯設置型のナンバープレート読取装置だ。もうひとつは、既存の街灯に監視機能を後付けする技術で、Axonはこの製品の開発にあたり、スマート街灯企業のUbicquia(ユビクア)と提携した。Ubicquiaは、2023年にFlock Safetyとも同様の目的で提携している。
ドローンを用いた追跡にも対応
Axonはまた、車両監視技術にドローンを組み合わせる計画も発表した。この仕組みを用いれば、警察は同社のパートナー企業のSkydio(スカイディオ)が提供するドローンを捜査に利用可能になる。詳細は未発表だが、スミスCEOはフォーブスに対し「特定のケースでは、車両の追跡や識別のためにドローンが非常に有効だ。現場の上空から状況を把握することで対応力が向上する」と語っている。
同社はさらに、警察のボディカメラに搭載されるAI音声アシスタント「Axon Assistant」も発表している。これは、現場の警察官向けに50以上の言語を翻訳できるツールで、所属部署の規則に関する質問にも答えることが可能だという。
スミスは、このAIアシスタントを用いれば、警官が未成年を護送する際のルールや、雨具を制服に着用する際の注意事項などのこまかな規定を、数百ページにおよぶマニュアルを探さなくても、即座に確認できるようになると説明した。
Axonは、今回の発表で同社のツールが、アマゾンの家庭用監視サービスのRing(リング)と連携可能になることも明かした。これにより、Ringのユーザーは警察からの要請があった場合に自宅のカメラへのアクセスを警察に提供するかどうかを選択できる。Flock Safetyもすでに同様の機能を提供している。



