欧州

2025.04.24 09:00

1930年代末に重なる世界、欧州は歴史的な軍備増強を実現できるか

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ただ、EUはすでに、加盟国を説得して再軍備計画の要素を実行に移してもらうのに手こずっている。クビリウスらとともに再軍備計画の基礎となる白書をまとめたカヤ・カラス外交安全保障上級代表(外相)は、各国を説得してウクライナへの軍事支援のために今年最大で400億ユーロ(約6兆5000億円)を確保したい考えだった。これはEUと加盟国による過去3年の軍事支援額の年平均(170億ユーロ弱)の倍以上にあたり、米国の穴もほぼ埋め合わせる額だ。だが、3月の首脳会合までにコンセンサスを得られず、代わりにまず砲弾調達のための50億ユーロ(約8100億円)について調整を進めることになった。

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それでもクビリウスは心配していない。「いくつかの加盟国が以前より大規模なウクライナ支援を発表しています」と彼は説明する。クビリウスは、多くの加盟国が再軍備計画に関する財政ルール除外で得られる資金をウクライナへの支援に充てると予想している。また、資金が積み上がっていくのであれば「それがこの計画のもとで提供されるのか、そうでないのかは重要でありません」とも語る。

長期的には、再軍備計画によるウクライナへの影響は、支援よりもウクライナとEUとの防衛生産協力による部分が大きくなる可能性がある。ドローン(無人機)やミサイル、榴弾砲をはじめ、ウクライナによる武器・弾薬の生産能力は、2022年2月のロシアによる全面侵攻開始以降、35倍に拡大している。「より良い統合はウクライナにとって重要なだけでなく、私たちにとっても大きな価値があります」とクビリウスは言う。

欧州の防衛支出をめぐっては、英当局や在ブリュッセルのシンクタンク、ブリューゲルがそれぞれ提案している共同調達の仕組みなど、ここへきて代替案もいくつか浮上しているが、クビリウスはそうした動きに動じるふうもない。2020年、EUは新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に際し、いくつかの対応策を検討した末に7500億ユーロ(約120兆円)規模の復興基金の設立で合意した。クビリウスは当時と同様に、議論を歓迎している。ただし、緊急に行動する必要性を薄めない限りにおいてだ。

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「私たちが望んでいないのは、加盟国側がもっと魅力的なものを待てるという印象を与えてしまうことです」とクビリウスはやや語気を強めた。懸かっているものはあまりに大きく、立ち止まっている余裕はない。「プーチン(ロシア大統領)は、私たちの白書を読ませたからといって抑止されるわけではありません」とクビリウスは警告する。「私たちは実行に向けて前に進まなければなりません」

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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