建築家・安藤忠雄の挑戦の軌跡を一望する展覧会「安藤忠雄展|青春」が、大阪梅田のグラングリーン大阪「VS.(ヴイエス)」で7月21日まで開催されている。
2017年東京・国立新美術館で30万人を集客した「安藤忠雄展|挑戦」に続く大規模個展で、大阪での開催は16年ぶり。開幕から約1カ月半、大阪・関西万博やグラングリーン大阪の人気も手伝い、大勢の人が足を運んでいる。
代表作をバーチャル映像で再現、五感で楽しむ展覧会

会場は安藤が長年尽力してきた、大阪の都市再生プロジェクト「グラングリーン大阪」の文化装置「ヴイエス」。芝生広場には、本展のテーマ「青春」を象徴する直径2.5mの巨大な「青りんご」のオブジェが設置されている。
台座には、安藤が傾倒していた19世紀のアメリカの詩人サムエル・ウルマンの詩とともに、安藤のメッセージ「いつまでも輝きを失わない、永遠の青春へ-。目指すは未熟で酸っぱくとも明日への希望に満ち溢れた青りんごの精神です」も刻まれている。
オープニングセレモニーでも安藤は熱い思いを語っていた。「人々に感動を与えるような、誇り高い仕事をするんだという志を持って、50年ひたすら走り続けてきた。資源のない国では、文化こそが最大の輸出産業になる。大阪・関西万博のような機会に、我々の底力を世界に示したい。そんな思いで展覧会を企画した」。
本展は約1400平方メートルの地下空間で、過去の代表作の軌跡をたどる「挑戦の軌跡」と「安藤忠雄の現在」の大きく2つのゾーンで構成。それぞれに特徴的なインスタレーション空間が広がり、これまでのキャリアを時系列で追体験できる仕組みになっている。約60のプロジェクトと安藤デザインによるプロダクトを展示。スケッチやドローイング、模型なども230点余り出展されている。

「挑戦の軌跡」ゾーンには、安藤建築の原形ともいうべき初期の代表作と国内外の代表作が並ぶ。幾何学と光を主題とする安藤建築のエッセンスを象徴する12枚の鉛筆ドローイングや若き日の旅のスケッチ、活動拠点である「大淀のアトリエ」の模型も展示。
1976年に手がけ、世界的建築家として知られる契機となった「住吉の長屋」も模型とスケッチを通じて紹介されている。コンクリートの建物の真ん中に中庭を設けた住空間は当時、住みにくいと酷評されたが、「自分の空があり、自然との一体を理解できていいんじゃないかと思った。家というのは合理性よりも自分にしかない世界を持っていることが大事だとわかった」と、安藤は振り返る。



