「目標がある限り、それは青春」 大阪で開催中の安藤忠雄展のメッセージ

建築家・安藤忠雄

本展覧会は、単なる建築作品展ではなく、その背後にある安藤忠雄の思想や人生哲学を垣間見られるのがおもしろい。

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例えば、「建築は人を感動させる装置でなければならない」という思想を展覧会にも反映。修成建設専門学校生によって製作された「70の住宅模型」には、後進への切なる願いが込められている。「子供の頃に大工の仕事に憧れたことがある。一時はプロボクサーをめざしたが、夢を断念。世界を見聞した後、建築の世界で独立し、自分の力で世界に出た。今の若者にももっと意欲を持って生きてほしい」と話す。

大阪生まれの安藤は独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。「住吉の長屋」で日本建築学会賞を受賞して以来、既成概念を打ち破る斬新な建築作品を次々と世に送り出してきた。90年代以降は活躍の舞台を世界に広げる一方、環境再生や震災復興といった社会貢献事業にも尽力。世界のANDOと評価されるいまでも活動拠点を大阪に置き、建築家の枠組みに留まらない八面六臂の活躍を続けている。

「希望と好奇心、命がけの覚悟があれば」

大病で5つの臓器を摘出し、80歳を超えた今も気迫を感じさせる安藤の原動力となっているのが、不屈の闘争心と失敗を恐れないチャレンジ精神だ。

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「ここを乗り越えれば、もっと遠くに行ける、違う世界を切り拓けるという希望と好奇心、命がけの覚悟があれば、人は生きていけるし、いつか光も見えてくる」と安藤。さらに「希望は感動から生まれる。心の震えが、次の一歩を踏み出す勇気になる。大切なのは、その瞬間を見逃さず、無心で追いかける情熱と覚悟を持つこと、全力を尽くすことだ」と説く。

限られた予算のなかで生み出した傑作「光の教会」は、まさに不屈の精神と、原点から闘うことが大きな力になるという信念がなければ実現しなかった建築だ。中之島の「こども本の森」プロジェクトは、自己資金で始動し、完成後に地方自治体に寄贈するという前例のないスキームで実現した。

本展のタイトルにもなっている「青春」は、年齢に縛られない生き方の象徴でもあり、人生100年時代の指針となる。「ただ単に生きてるというだけではなしに、ひたすら前を向いて生きること。60歳でも70歳でも目標がある限り、それは青春。そう思って100歳まで走り続ける。そのためには知的体力と肉体的な体力、おもしろいことをやろうという心意気が必要」と力説する。

最後に、地元大阪に対しては「随分と停滞してしまったが、“生きた都市の歴史”がある。大阪らしいアイデンティティを守り、育んでいくこと。都市の骨格が街の中にしっかり息づいていることは大きなアドバンテージになる」と、厳しくも温かい眼差しを投げかけた。

建築で感動を生むという安藤忠雄の理念を体現した同展。会場に足を運べば、その“走り続ける精神”が建築を通して確かに伝わってくる。

文・写真=橋長初代

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