
原寸サイズで再現された教会3部作のひとつ、「水の教会」にも圧倒される。1988年、北海道・占冠村に建てられたこの教会は、自然と建築が溶け合い、精神と空間をつなぐ「祈りの場」として世界的に知られている。天井高4.5mのスタジオには、北海道の雄大な自然が広がり、水上に大きな十字架が浮かぶ。パノラマ映像と、実際に水を張った水盤でリアルに再現することで、まるで目の前に実物が存在するかのような迫力がある。
「北海道のトマムまで行くのは遠いので、ここで1分の1を見せようと。お金がかかるといわれたが、大阪の人と関西の人に感動してほしいから、ここでしか体験できないものを作った」。「感動がなければ人は来ない」と繰り返す安藤は、建築だけでなく、展覧会においてもその姿勢を貫いている。
37年越しの直島プロジェクトの軌跡
「安藤忠雄の現在」ゾーンでは、最近作と共に、いま進行中の仕事を6つのテーマで展示。80年代に始まる「直島プロジェクト」のような長期スパンの作品から、パリ中心部に建つ「ブルス・ドゥ・コメルス」に代表される歴史的建造物の再生プロジェクト、「こども本の森」のような社会貢献プロジェクトまでを詳しく紹介する。
ベネッセホールディングスの福武總一郎が構想した瀬戸内の直島プロジェクトは、いまやアートと建築の力で実現した地方創生のモデルケースとして有名だ。安藤は、美術館とホテルが一体化した「ベネッセハウス ミュージアム」にはじまり、建物の大半が地下に埋没した「地中美術館」など最初期からプロジェクトに関わってきた。来る5月31日には10施設目の「直島新美術館」が開館する。
本展では、直島を現代アートの聖地に変貌させた37年間の軌跡を模型と記録映像、パネルなどで立体的に紹介。辺鄙なロケーションのため、最初は反対したそうだが、「感動を送り込めば人は来る。そう信じて疑わない福武さんの情熱に突き動かされた」と安藤。ふたりの強力なタッグと熱い思いが結実し、直島はいま国内外から年間70万人が訪れる人気観光地になっている。
直島プロジェクトのインスタレーションでは、海の上を一隻の船が航行する演出も。この船は現在計画進行中の「こども図書館船『ほんのもり号』」だ。大阪中之島から始まった児童図書施設「こども本の森」プロジェクトの一環で、安藤が購入した小型船を改装し、移動式図書館として瀬戸内海沿岸を巡ることになっている。

展覧会の最後の目玉が、臨場感を味わえる映像インスタレーション「安藤忠雄の建築」。天井高15m、幅45mのキューブ型スタジオの3面を使い、安藤建築を象徴する3作品を8K映像で再現した。
コンクリートの壁に開けられた十字形のスリットから薄暗い空間に自然光が差し込む「光の教会」(大阪)、ラベンダー畑や積雪の丘に現れる「真駒内滝野霊園頭大仏」(北海道)、旧穀物取引所を現代美術館へと甦らせた「ブルス・ドゥ・コメルス」(パリ)。現地に行かなくてもわずか8分で安藤建築の醍醐味に触れられ、感動を擬似体験できる。


