経済・社会

2025.05.07 14:15

貧困家庭の高校生を救う一杯のコーヒー。課題集中校で体験格差が広がっている問題

paru –stock.adobe.com

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「課題解決より、課題発見が大事」「良い問いが、良い答えを生む」この考え方に共感する、リアルな社会問題をいち早く知りたい方への連載が始まります。著者は、日本NPOセンター「課題ラボ」メンバー。全国各地にある5万以上のNPOとのネットワークを生かし、現場の今の課題を常時収集しています。

その課題に電通Bチームを中心としたコピーライターが、わかりやすく「〇〇問題」という形で名前をつけてリスト化してきた課題ラボの過去7年の活動のなかから、毎月ひとつの社会課題にフォーカスしたコラムを掲載。課題のなかには、検索しても出てこないものや、他のメディアでは見られないものも。解きたいと思った課題をみんなで解いていけば、きっと新しい社会が見えてくるはずです。 


社会とつながる「文化のフック」

「課題集中校」「教育困難校」「底辺校」と呼ばれている高校があります。教育を行うことが難しい状態の高校のことです。これらの高校は、「通う子どもが金髪に茶髪で授業態度が悪い」や「非行や校内暴力が多い」とまるで”子ども自身に問題がある”かのように見なされてしまいます。「●●高校の生徒は入店お断り」とお店に貼りだされてしまうことも…。

しかしそうした子どもたちの背景には、様々な困難があります。課題集中校とされる高校生を支援するNPO法人パノラマによると、3人に1人が貧困状態の子どもです。親からのネグレクトにより家に居場所がない、片親であることで生活に制限がある、経済的に厳しい状態にあるなど様々な事情を抱えています。

「貧困であることで物をもっていないということもあるけれど、いろんな機会へのアクセスがありません」パノラマのスタッフはこう語ります。

「文化的体験をすると身体に”フックが付く”と思っています。身体にフックが付いてる子どもは、ちょっと雑談をするとフックとフックがひっかかって信頼関係や人間関係などの社会的資本につながる。家族とまちの外に遊びに行ったとか浴衣を着せてもらったとか。ですが、こども時代にする共通の文化体験にアクセスできず、身体にフックが付いていない子どもは、他の人のフックと絡まない。セーフティーネットにもひっかからず、社会的に孤立してしまいます」

次ページ > 家庭や学校で作れなかった”文化のフック”を作って、なんとか社会とつながってもらう。

文=三本 裕子(特定非営利活動法人 日本NPOセンター)

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