サイエンス

2025.04.27 17:00

立ち入り禁止の毒へビ島、その主「黄金のマムシ」が近絶滅種になった理由

ゴールデン・ランスヘッド(Wirestock Creators / Shutterstock.com)

このヘビは、獲物に合わせて習性までも適応させてきた。通常は、林床(森林の地表面)でとぐろを巻いているランスヘッドが、Elaenia chilensisが渡来する季節には木に登り、枝の上でじっとしていることが観察されている。Elaenia chilensisが餌を探しにくるところを待ち伏せしているのだ。

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最大の武器が、最大の脅威になってしまう

ゴールデン・ランスヘッドの毒は、獲物を迅速に仕留めるという1つの目的のために進化した。動画で言及されているように、対応する本土のヘビと比べると5倍近い毒性があり、人体の組織を破壊したり、脳出血や大規模な腸内出血を引き起こしたりする。

一方、この生化学的な残忍さによって、ゴールデン・ランスヘッドは、科学者だけでなく密輸業者の標的にもなってしまった。闇市場では、ゴールデン・ランスヘッドは1匹で1万~3万ドル(約140万~420万円)になる。

科学上のブレイクスルーの可能性は実際に存在する。学術誌『Toxicon』で2024年2月に発表された研究によると、ゴールデン・ランスヘッドが属するヤジリハブ属(Bothrops)の他種の毒は、薬理学的な可能性を秘めていることがわかっている。一部のがんの治療に役立つかもしれない抗腫瘍化合物が開発できる可能性があるのだ。

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ヤジリハブ属の毒の医学的価値といえば、有名な例として、ハララカの毒から開発された、血圧を下げる薬「カプトプリル」も挙げられる。高血圧の治療に革命を起こし、現代のACE阻害薬に至る道を切り開いたのだ。

ケイマーダ・グランデ島には、危険と発見が紙一重で同居している。この島は、危険なだけでなく、すばらしいものの鍵までも握っているのかもしれない。人間が住んでおらず、足を踏み入れる者もほとんどいない島で、絶滅の危険にあるヘビが、いつの日か、人の命を救うことになるかもしれないのだ。非常に敵対的な環境の中であっても、自然から思いがけない方法で科学が生まれる可能性があることを示している。

forbes.com 原文

翻訳=緒方亮/ガリレオ

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